第8話『三日間の見回りを終えて』
三日間にわたる見回り任務が終わり、神子たちは王都オルディスへ戻ってきた。
陽が傾く頃、天議の間には六人が静かに集まっていた。
エルヴィアが柔らかな笑みで彼らを迎える。
「皆さん、お疲れさまでした。三日にわたる見回り、ご苦労でした。では、順に報告をお願いできますか?」
ガルザスが一歩前に出る。
「大地の深部、地脈の流れは安定していた。地殻の鼓動にも乱れはない」
ライゼルも胸を張る。
「空の層も異常なし!風が一瞬止まった気がしたけど……まぁ大丈夫だろ」
セリオスが小さく眉を動かすが、何も言わない。
次にリュミエルが一歩進んだ。
「森も生命の流れは落ち着いていました。ただ、夜だけ少し静かになっていたような気がします」
「静か?」
エルヴィアが優しく問い返す。
リュミエルが続ける。
「はい。鳥や虫たちの動きが、ほんの少し鈍いような……でも、疲れか気温のせいかもしれません」
その隣でルナリアが胸元をぎゅっと握った。
「……影が、夜だけざわついていました。大きなものではないけれど……少しだけ」
ライゼルが顎に手を当てる。
「へぇ? 影ってざわつくもんなのか?」
「あ……う、うん……いつもより、落ち着かない感じがしたの」
「ふむ……」
ガルザスが腕を組む。
その全てを、セリオスは静かに聞いていた。
エルヴィアは軽く頷いて言う。
「どれも重大な異変ではありませんね。ですが、情報として記録しておきましょう。小さな変化を覚えておくことは大切です」
セリオスが一歩前へ出た。
「均衡域では、神気の流れが普段より整いすぎていました。本来あるべき揺らぎが、少し弱い気がします」
「揺らぎが弱い……不思議ですね」
リュミエルが首を傾げる。
「気のせいかもしれません」
セリオスは淡々と続けた。
「ただ、“違和感”として記録しておきます」
エルヴィアは六人の顔を順に見渡し、静かに微笑む。
「皆さん、三日の任務をよくやり遂げました。今日はゆっくり休んでください。明日からは通常通りの訓練に戻ります」
ライゼルが大きく伸びをする。
「よーし、久々に街で飯でも食うか!」
「……騒ぎすぎないでくださいね」
セリオスが小さくため息をつく。
リュミエルは軽く笑い、ルナリアはほっと胸をなでおろした。
三日間の任務を終えた神子たちは、それぞれの帰り道へと歩き出す。




