第6話『大地と空の息』
ガルザスとライゼルの担当区域は、王都オルディスから東に広がる広大な断層地帯だった。
「いやぁ〜、見てみろよこの景色!空を飛ぶやつの特権だな!」
ライゼルは高く舞い上がり、風を裂きながら旋回した。
その動きに合わせて、雷気が細い尾を引く。
地上では、ガルザスがゆっくりと大地に手を触れ、鼓動のような震えを確かめていた。
「……静かだ。土の流れも、いつもと変わらない」
「んじゃ上も問題なしだな!」
雷の羽根を広げたように、ライゼルは気楽に笑う。
ガルザスは空を見上げ、まぶしそうに目を細めた。
「……お前、楽しんでないか?」
「楽しむに決まってんだろ。見回りって言っても、この高さ飛び回れるだけで気分がいいんだよ!」
「……まあ、否定はしない」
ガルザスの足元で、大地がふわりと盛り上がる。
そのまま小さな丘が形成され、彼はそこに腰を下ろした。
「おい、仕事中に休むなよ!」
「違う。これは“大地の声”を聞くためだ」
ガルザスは静かに目を閉じた。
呼吸を合わせるように、地面がゆっくり脈を打つ。
「……やはり変化なし。深部の流れも安定している」
「よし、それなら……」
と、ライゼルが言いかけたとき。
空気が“ぴたり”と止まった。
ほんの一瞬、風が凍ったように動きをやめたのだ。
「……あれ?」
ライゼルが眉を寄せる。
だが次の瞬間、何事もなかったように風が戻る。
「……気のせいか?」
「風が、止まった?」
ガルザスがゆっくり立ち上がる。
大地には特に異常は感じられない。
ライゼルは高く跳び、空へもう一度上昇した。
「っと……いや、大丈夫そうだな。空の層も乱れてない」
ガルザスも地を叩き、深く響く音で状況を確かめた。
「大地も問題なしだ」
顔を見合わせた二人は、同時に肩をすくめた。
「お前の雷が空をビビらせたんじゃねぇのか」
ガルザスがぼそり。
「はぁ!? 俺のせい!?いや逆だろ、デカいお前が歩いたからだ!」
「歩いただけで風は止まらない」
「言い切るなよ!!」
そんなやり取りに断層の谷間に笑い声が響いた。
二人が見回りを終えて引き返す頃、太陽はもう地平に沈みかけていた。
「……よし、任務初日はこんなもんだな」
ライゼルが伸びをする。
「異常なし。それで十分だ」
ガルザスは大地に軽く触れ、静かに礼をした。




