最終話『学ぶ者たちの時代へ』
砕けた大地に風が通り抜ける。
戦いの余熱だけが、まだ地面の奥で燻っていた。
リュオスは何も言わず、その場を離れていく。
背を向けるでもなく、立ち去るでもなく。
ただ──興味を失った者の静かな歩き方だった。
シェルヴァたちがネヴラを抱えて消えていった闇の向こうを、ライゼルは悔しそうににらんでいた。
「……行っちまったな」
ガルザスは大きく息を吐き、拳を開いた。
「追わなくて正解だったのかもしれん。太陽の兄ちゃんが言う通り、今の俺たちじゃ……」
ルナリアは肩を抱きしめるように影をたたみ、
「……また来るんだよね、きっと」
と小さく呟く。
リュミエルは静かに首を振った。
「来るよ。でも……次は、今日ほど絶望したくない」
未来視を整えつつあるセリオスは、倒れた瓦礫を見つめながら、淡々と言葉を落とした。
「今回、勝ちに近い形で終わった。だが、本質は“負けていないだけ”だ」
四人がセリオスを見る。
彼の目は、もうネヴラの背ではなく──
“これから”を見据えていた。
「次、同じ規模、いや、それ以上で来たとき、我々だけでは守り切れない可能性が高い」
ライゼルが舌を鳴らす。
「じゃあどうすりゃいい?また太陽神子に頼むか?」
セリオスは首を横に振った。
「頼れない。あの方は気紛れだ。星の未来を委ねるのは危険すぎる」
リュミエルが小さく息を呑む。
ルナリアも真剣な目でセリオスを見つめた。
ガルザスが腕を組む。
「じゃあ……どうする」
セリオスは、少しだけ目を閉じてから言った。
「育てるんだ。我々では届かなかった場所へ行ける者たちを。この星を守る“次の世代”を」
その言葉は熱くも強くもない。
だが、不思議と反論の余地がなかった。
ルナリアが沈黙のあと、小さく頷く。
「……必要、だと思う。怖くても、知らないから余計に怖いの。だったら学べる場所がいる」
リュミエルは息を吸い込み、
「私は賛成。次に同じ思いをしないために」
と続けた。
ガルザスもごつい拳を握りしめる。
「俺たちが教える側に回る日が来るとはな。だが、悪くない」
ライゼルは苦笑しつつ肩をすくめた。
「しゃーねぇな。次はもっと強えのが来るかもしれないんだろ?なら、育てとくしかねぇよな」
セリオスは四人を見渡し、短く、しかし確かな声でまとめた。
「王都オルディスに“学ぶ場”を作ろう。戦える者を育てるための場所を」
その提案に、五人全員が静かに頷いた。
風がひとつ吹いた。
焦げた匂いを連れ去り、代わりに新しい空気を運んでくる。
こうして──
星を守るための“学びの場”が生まれた。
第一章へ続く。




