第38話『終ノ一閃』
倒れた二体を背に、戦場の熱はさらに高まった。
残る三体──シェルヴァ、ネザリオ、ラグド=オラ。
どれも神将級だが、先ほどまでの圧はもう感じられない。
雷と大地が切り開いた流れが、戦場全体を確かに五人へ傾けていた。
シェルヴァの残像は乱れ、ネザリオの気配は焦りを帯び、ラグド=オラの輪郭も僅かに不規則に揺れる。
「押せる……!」
ルナリアの影が深く震え、前へ踏み込む。
それぞれが自身の戦線で優勢に立ち始め、三体は明らかに追い詰められていた。
このままなら──
本当に倒し切れる。
五人全員がそう感じた瞬間だった。
光柱の中心。
そこで佇むリュオスだけが、別のものを見ていた。
戦う三体でも、倒れた二体でもない。
視線の先にいるのは、ずっと動かずに戦場を見据えるネヴラ。
黒い外套がふわりと揺れる。
リュオスは静かに瞬きを一度した。
そのわずかな仕草に、金色の瞳へ“答え”が映る。
「……なるほどな」
その声は、独り言のように軽い。
「ぬしの底……すでに見えた」
戦いを重ねても深まらない力、膨らんでいく気配の奥にある“空洞”。
ネヴラがどれほど星を喰らおうと、そこにある器は変わらない。
だから──
つまらない。
「……飽いた。終いにしよう」
リュオスが指先を軽く横に払った。
それだけで光が集まり始める。
太陽が凝縮したかのような、真白の輝き。
名を呼ぶ必要すらないほど当たり前の動作で、
彼は淡く息を吸い──
「──終ノ一閃」
光が走った。
閃光が影を裂き、黒霧を焼き尽くし、大気ごと戦場を貫く。
音すら追いつかない一撃。
ネヴラの巨体が後方へ弾かれ、削れた地面に突き刺さるように沈んだ。
黒神気が霧散し、その身体は動かない。
決定的な一撃。
瞬間、残る三体が一斉に戦いを捨てて走った。
主へ向かって、護るためだけに。
シェルヴァの影が揺れ、ネザリオの気配が乱れ、ラグド=オラの身体がかき消えるように滑る。
三体は瀕死のネヴラの前に並び、その身を支えるように膝をついた。
戦場から、音が消える。
風が吹き抜け、砕けた大地だけがそこに残った。




