第35話『反撃の幕が上がる』
踏み込んだ足が、確かな重さを取り戻す。
さっきまで身体の内側で濁っていた感覚が、すっと晴れた。
呼吸が軽くなり、指先が思い通りに動く。
五人の神子は、同時に前へ出た。
雷光をまとい、ライゼルが一気に駆け抜ける。
イェルダの風が迫るが──
もう流されない。
「今度は通す!」
雷を肩にまとわせ、真正面から切り裂く。
風が散り、火花が走る。
イェルダの輪郭が揺れた。
ガルザスは静かに足を踏みしめる。
先ほどまで乱れていた大地の響きが戻った。
ヴェロークが巨腕を叩きつける。
大地ごと押し潰すような一撃。
だがガルザスは左拳で受け止め、右拳を突き上げる。
「……まだ終わりじゃない!」
拳と岩がぶつかり、衝撃が二人の間で爆ぜた。
ヴェロークは押し返す力を確かに感じた。
影が交錯し、ルナリアとシェルヴァの距離が詰まる。
さっきまで影が震えていたのが嘘のように、今は静かで鋭い。
「行かせないよ!」
伸びた影刃を、シェルヴァの影が迎撃する。
刃が弾け、影同士が軋む。
互いの足が止まり、影の攻防がさらに激しくなる。
光が鼓動する。
リュミエルは胸に手を当て、残った力を静かに結んだ。
風が射線を曲げようと迫る。
だが、もう奪われない。
「届いて!」
光が風の壁を貫き、ネザリオへ向けて放たれた。
未来を歪める力が軋む。
ネザリオの肩が小さく揺れた。
セリオスは目を細める。
さっきまで霞んでいた視界が、今は澄んでいる。
ラグド=オラが輪郭を濁らせ、セリオスの“見える未来”を乱そうとする。
しかしセリオスは一歩踏み出し、揺らぐ輪郭へ指を向けた。
「読める……今は、読める!」
未来視が再び形を取り戻す。
揺らぐ輪郭が、確かにそこに“存在”した。
五つの戦線が、同時に動き始める。
雷が弾け、大地が裂け、影が伸び、光が刺し込み、視界が開ける。
ほんの少し──
ほんの少しだけだが、優位が五人へ傾く。
影たちが動きを変え始める。
“押し戻されている”と理解したのだ。
だが、まだ倒れない。
むしろ、ここからが本番だ。
ライゼルが叫ぶ。
「行くぞ!ここからだ!」
五対五。
今度は退かない。




