第31話『主を守る五影《ごえい》』
五人が踏み込むたび、戦線は激しく散らされた。
ライゼルが雷光をまとって横へ走れば、影が滑り込んで斬りかかる。
「邪魔すんな!あいつの所まで行かねぇと!」
ガルザスが大地を割って前へ出れば、岩の腕が別角度から拳に絡む。
「退けッ!まずはあの中心を……!」
リュミエルの光が収束する瞬間、風が射線をねじ曲げて奪う。
「……これ以上、神気を吸わせるわけにはいかないのにッ!」
ルナリアの影が伸びれば、別の影が横から断ち切ってくる。
「近づけない…でも行かなきゃ!」
セリオスが未来を読もうとする度、濁る輪郭が進路に立ちふさがる。
「視せろ!ネヴラへ通る未来……どこだ!」
五体の影の攻撃は、どの一撃も軽くない。
一つ受け損ねれば致命に繋がる。
五体はそれぞれが“本命”に足る強さだった。
だからこそ──
ネヴラへ集中する余裕など、微塵もない。
一つ抜けようとすれば、すぐに別の衝突が生まれ、戦場はまた五つに割れていった。
殴り、斬り結びながら、ただ“前”へ進めない。
それは、この場で五体を突破するには、一瞬たりとも気を抜けないという現実だった。
戦場の中央。
ネヴラの外套だけがゆっくり揺れている。
その足元から、地面の色がすこしずつ薄くなっていった。
草は灰へと近づき、大地の神気が吸い上げられていく。
ネヴラが低く呟いた。
「……我の糧には、ちょうどいい。」
たったそれだけの言葉で、周囲の空気がひやりと冷たくなった。
風が重く沈み、戦場の“活力”が引きずられるように減っていく。
五人は衝突を続けながら、確実に状況が悪化していることだけは理解した。
このままではいけない──
だが攻撃の密度は増していき、ネヴラへ意識を裂く隙はどこにもない。
一撃でも流せば、相手の刃が届く。
この五体を“突破する”という選択肢が、現実味を帯びなくなるほどの圧力だった。
そんな時、空がふるえた。
雲が裂けるように光が差し、一瞬、戦場全体の影が縮んだ。
次の瞬間──
空が白く膨らんでいく。
光が一点から落下し、光柱が戦場へ突き刺さった。




