第12話『落下するものの“不自然さ”』
翌日。
王都オルディスの北側で、再び空に細い亀裂が走った。
「また落ちてくる……!」
ルナリアが影を震わせる。
裂け目から落下したのは、昨日と同じ“戦獣級”。
しかし──
その落ち方が違った。
まるで、誰かに“投げ捨てられた”ような勢いだった。
砂煙が巻き上がり、戦獣級は三肢をばらりと崩したまま動かない。
「……生きているのか?」
ライゼルが眉を寄せる。
ガルザスが近づき、地を震わせて反応を探った。
「……微かに動いているがおかしい。昨日までの個体とは、反応が違う」
リュミエルがそっと光を纏いながら言う。
「まるで動かされているだけみたい。自分で動こうとしていない……?」
セリオスが静かに膝をつき、その“歪な生物”を観測した。
「生物的な意思が……ほとんどない。動く力はあるのに、“動く理由”を持っていない。」
「つまり……どういうこと?」
リュミエルが不安げに尋ねる。
セリオスは目を細める。
「……あれは兵士のはずだ。だが、兵士として最低限の“意思”すらない。ただ落とされて、壊れただけの物体だ。」
ガルザスが低く呟く。
「兵を……捨ててるのか?」
「いや……」
セリオスは首を振った。
「“捨てている”とも違う。まるで──“試している”ようだ。」
「試している……?」
ルナリアが震えた声で反復する。
「何を?」
ライゼルが半笑いで言う。
「俺たちの反応か?強さか?それとも……」
「違う」
セリオスが立ち上がる。
「断界種は“我々を見ていない”。この動きには、何の意図すら感じられない。」
「どういうことだよ、それ……」
ライゼルが口を開ける。
セリオスは、空の裂け目が閉じていく方向をじっと見つめた。
「……落ちてきているのに、“意図がない”。敵意も、殺意も、目的も……何もない。ただ、こちらの世界に“物を流し込んでいるだけ”にしか見えない。」
ガルザスが拳を握る。
「……余計に気持ち悪いな。」
「……はい」
リュミエルも頷いた。
「意図がないほうが、怖いよ……」
風が吹き抜ける。
落下した断界種は、砂のように崩れていった。
「戻ろう」
セリオスがきっぱり言う。
「この現象……続くなら、必ず“何か”が現れる。」
ルナリアが影を手で押さえながら、小さく呟いた。
「……次は、あれよりもっと大きいのが来る気がする……」
誰もその言葉を否定しなかった。




