第八章
柳田はあの夜、小野と顔を合わせ、近いうちに温泉街の宿全てに家宅捜査をするという言葉を漏らした。
小野の軽い性格が柳田には警察という重苦しい存在を忘れさせてくれるように思いつつも、その性格を卑下している所も持ち合わせていた。
その日の夜に柳田はこの殺人に使用した道具をどう処分しようかと悩んでいた。
これらを今すぐにでも捨てていきたいが、一体どこへ捨てようか、真夜中に捨てに行くのは決まっているが、捨てても見つからない場所が柳田には検討もつかなかった。
榛名湖に沈めれば見つからないとも思ったが、榛名湖まで歩いて行くのはあの坂の山道を夜中に登るとなると帰ってくる頃には朝になっているであろうし、何しろ、灯りを持っていても何も見えず、船もないので、捨てても岸の方ですぐに見つかってしまうであろうと思われた。
温泉街の近くで捨てたのであればいずれは見つかる恐れもあった。
誰も足を踏み入れない場所。そんな事を考えてる時に、ふと、柳田には思いつく場所があった。
それは石段を降りて、温泉街からも少しばかり離れた所にある家があった。一昨年までは土産屋として営業をしていたのだが、店主が亡くなり、そのまま店が廃業し、今は誰も住んでいない廃墟がある。外観は未だ比較的綺麗であるが、内部は埃塗れで、所々天井が腐って崩れていたりしてるのを柳田はここらを宿の仕事で歩き回っている知っていたのだ。
あそこであるならば、警察もそして民間人ですら廃墟とは思わず中に入ることもないだろう。そしてまさか、そこに殺人に使用した道具もあるとは思わないであろう。
そしてその夜すぐに柳田は0時を過ぎると、一人でこっそりを宿を出て、石段を降り、道を渡り、しばらく急な坂を降りながらその家へと向かった。
家に着くと、裏手にある窓に灯を照らし、辺りを見回すと地面に落ちていた大きい石を使い窓を壊した。
その音が思いの外、夜の闇に反響し、柳田は一度手を止めたが、聞こえるものは虫の声のみであり、柳田はそのばくばくとした心臓が収まるのを待ち、再び窓を壊し、その窓から家の中へ入った。
家の中は恐らく店主がいた頃のままであり、柳田が侵入した場所は生活をしている場所であった。柳田はその部屋の奥に押し入れがあるのを見つけ、その押し入れの中に殺人で使用した道具を投げるように入れた。
押し入れには物は何も無く、物があれば隠せることができたと思ったのだが、見つかることはないとたかを括りそのまま足音を消してその家を後にした。外は地面の葉っぱの音が響いていたが、夜中であるので、人は見えず、柳田は誰にも会うことなく、宿へと戻ることができた。




