表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第六章

 岸本と小野は事件があった翌日、伊香保に着き、十番宿の人に事情聴取を行った後、近くの旅館へも事情聴取を行っていた。

 隣の十一番宿、九番宿に事情聴取を行い、その後に四番宿に事情聴取を行っていた。

 二人は主人に通され、そこでまず主人に事情聴取を行った。

「事件の日にあなたが何をなさっていたか、教えてもらってもよろしいでしょうか?」

「あの日は、というより、いつもなんですが、私はこのような立場ですので、お客様の前には立つことはあまりなく、事務作業を行っておりました」

「それを証明できる人はいますでしょうか?」

「女将が二度ほど、茶を持ってきてくれましたので」

「それは何時頃ですか?」

「大体いつもは七時と八時になっています。ただ、お客様が多いくて忙しい人などは時間がずれたり、またはお客様の方を優先したりしております。ですけれど、その日はしっかりとその時間であったと思います」

「その日、反対側の旅館から叫び声を聞いたりはしませんでしたか?」

「いえ、特にそう言った声は聞こえませんでした」

 この言葉は十番宿の隣の旅館でも同じ言葉であった。

「殺されたのですね」

「はい、刃物で喉元を刺されて」

「そうでしたか。すみません、殺人事件があったのは知っていたのですが、誰が、どう殺されてまでは知らなかったので、つい気になって」

「いえ、あまりこちらとしては情報を広めないようにしていますので、後にまた新聞などに載るかと」

 岸本は穏やかな口調で話していた。決して相手を威圧的に感じさせない彼の熟練の技であろう。

 続いては女将に事情聴取をすることにした。ゆっくりと部屋に入った女将は落ち着き払っていたが、その不安からくる不必要な汗は小野の目に何度か映っていた。

「さて、他の方にも伺っているのですが、事件があった日、あなたは何をなさっていたか、お話願えますか?」

「ええ、あの日はお客様に料理を運んだり、お話をしていたりしていました」

「とても忙しそうですね。それであなたは主人に茶を持ってくる仕事があるそうですね。何時頃に持って行かれたのですか?」

「七時と八時です」

「ぴったりとですか?」

「ええ、そうだと思います」

 女将はしっかりとした声で言った。嘘偽りが全くと言っていいほど感じられない声であった。

「昨日、手前の十番宿から、声が聞こえたりしましたか?」

「声というと、亡くなられた方のですか?」

「ええ、刺されたのですよ」

 女将は顔を青白くさせて如何にもショックを受けたようであった。小野は気を失うのではないかと思ったが、女将は一分程して言葉を出した。

「そうですか。お気の毒に。昨日は特にそう言った声は聞いてません」

「そうですか」

 そしていくつかの質問をして、女将はその場を後にした。やがて、二人は柳田を始めとする他の従業員にも話を聞いた。

 その日の夜に、小野は岸本に気になった事を聞いてみた。

 だが、岸本はその小野の疑問には深く考えることはせず、とりあえずは状況を知ろうということになった。

 だが、小野はその考えを今の今まで消し去ることはしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ