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少年のフリをしていた私がいつの間にかマフィアのボスに愛されていたお話  作者: ぽーりー


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25/25

25 すべてをあなたに



最終話です☺️





はぁ・・・もう息がこんなに白くなる。

私は寒空の下、白いガーデンチェアに座って噴水を眺めていた。

私はレイさんの即位式の後、大広間で開催されているパーティーに出席していた。

私も王女として、貴賓たちと挨拶と乾杯を交わしていたけれど、少し酔いが回ったので外の空気を吸いに中庭に出ていた。

長く席を空けたらお母さんが心配するかな・・・。

そう思って立ち上がると、後ろからサクッサクッという足音が聞こえてきた。


「こんなところにいたら風邪ひくぞ?」


えっ??

驚いて振り返ると。


「リュ、リュウさん??なんで??」


そこには白いタキシード姿のリュウさんが立っていた。

トレードマークだった長い黒髪も、目にかかるくらいまで短く切り揃えられている。


「俺もこのパーティーに呼ばれたんだ。陛下から」

「え?レイさんが招待してたの?」

「あぁ」


レイさんそんなこと一言も言ってなかったのに・・・。


「それよりどうしちゃったの?その髪!」

「昨日切った。変か?」

「ううん。似合ってる・・・。なんだか若く見えるね?」

「はっ?お前俺をいくつだと思ってるんだ?」

「え・・・?そういえば私、リュウさんの年齢知らないかも」

「今更か?アニスは俺に興味がないんだな?」


そう言ってリュウさんがふてくされるもんだから私は焦って。


「ち、違うよ?リュウさんが何歳でも別に気にしないから!だから聞かなかったんだよ?」

「俺は今年で25だ」

「え??じゃあ私と6歳しか違わないの??」

「なんで驚く?」

「だって、もっと年上かと思ってた」

「はっ?一体いくつだと思ってたんだ??」

「30歳くらいかなって」

「ははっ。失礼な奴だ」


リュウさんが呆れたように笑った。

短い髪がサラサラと風に揺れて、それがあまりにもかっこよくて見惚れていると、リュウさんが私の頬に触れた。


「酒を飲んだのか?顔が赤い」

「うん。少しだけだよ?」

「俺以外の前で酒を飲むな」

「あははっ。それは無理だよ。これからもこんなパーティーに出席しなきゃだもん」

「それは王女だからか?」

「そうだよ?」

「じゃあ王女じゃなくなればいいんだな?」

「え?」


どういうこと?

私が目を丸くしてると、リュウさんが突然私の前に跪いた。


「ど、どうしたの??白い服が汚れちゃうよ??」


私がリュウさんを立ち上がらせようとしても、リュウさんは片足を地面につけたままで。

胸ポケットから小さな箱を取り出したかと思うと、それを私の胸の前に差し出した。

え・・・?


「アニス・・・俺と結婚してくれ。俺をお前の最後の男にしてほしい」


そう言ってリュウさんが小箱を開けると、中にはダイヤモンドがついた指輪が入っていて。

これってもしかしてプロポーズ??

私は信じられなくて両手で口を覆った。


「アニス・・・?」


リュウさんが不安げに私を見上げていた。

早く何か答えなきゃって思うけど、言葉が出て来なくて・・・。

代わりに私の瞳からとめどなく涙が(こぼ)れた。


「アニス・・・それは嬉し涙か?」

「うん・・・」

「じゃあ最後の男にしてくれるんだな?」

「ふふっ・・・最初だけじゃ足りなかったんだ?」

「あぁ。お前の全部がほしい」

「欲張りだね」

「だめか?」

「ううん。いいよ?私の全部はリュウさんのものだから・・・。でもその代わり、リュウさんも全部を私にくれる?」

「当たり前だ。俺のすべてはお前のものだ」


そう言ってリュウさんは私の指に指輪をはめると、突然私を抱き上げた。


「きゃあっ」


私が落ちないように首にしがみつくと、リュウさんが私を見上げて。


「本当にいいのか?結婚したらお前は王女じゃなくなるぞ?」

「私王女なんて興味ないよ?リュウさんとだったら西地区で暮らしたっていいんだから」

「ははっ。本当に俺と結婚して後悔しないか?」

「後悔するわけないでしょ?レイさんとお母さんが許してくれるかはわからないけど・・・」

「安心しろ。お前を娶るために侯爵の爵位を手に入れた」

「え・・・?」


爵位って手に入るものなの??


「数ヶ月前にスーベンを治めている侯爵家の養子になったんだ。それで昨日、正式に爵位を受け継いだ」

「え??リュウさんが侯爵になったってこと??どうやって??」

「まぁ・・・簡単に言うと金で買った。陛下も力を貸してくれたけどな」

「レイさんが??」

「あぁ。だからこれからお前は侯爵夫人だ」

「そっか・・・」


私と結婚するために爵位まで手に入れてくれたんだ。


「ありがとうリュウさん」


私がリュウさんの首に抱きつくと、リュウさんはそのまま歩き出した。


「パーティーに戻るの?」

「戻るわけないだろう?」

「え?じゃあどこに行くの?」

「お前とスーベンの屋敷に戻る」

「だ、だめだよ?色々と結婚の手続きとかもあるだろうし」

「やっとお前が俺のものになったのに、いつまでおあずけを食らうんだ?」

「私は逃げないから大丈夫だよ?だからちょっとだけ我慢してね」


そう言ってリュウさんのほっぺにキスすると、リュウさんが吹き出した。


「ははっ!俺の奥さんはどうやら煽る天才らしいな?」

「え?」


だから煽るってどういうこと?


「スーベンに戻ったら覚悟しておけ。三日三晩寝室から出られないと思えよ?」

「み、三日三晩?」








それから半年後、私たちの結婚式が王都にある大聖堂で執り行われた。

結婚式を終えると、私たちはその日のうちにスーベンにあるリュウさんの屋敷へと向かった。

スーベンは王都から馬車で3時間程のところにある避暑地で、ワインを作るための葡萄畑が広がる長閑(のどか)な地域だ。

これからこんなに素敵な場所で過ごすんだ・・・。

気持ちのいい風を感じながら窓の外を眺めていると、リュウさんが私のことを後ろから抱きしめた。


「もうすぐ屋敷に着くぞ」

「うん」

「半年前に俺が言った言葉を覚えてるか?」

「半年前?」


なんだったっけ?


「プロポーズした時に言っただろう?」

「あ」


もしかして三日三晩寝室から出られないって話??

リュウさんが金色の瞳を細めて嬉しそうに微笑んだ。


「楽しみだな」

「う、うん?」


まさか冗談だよね?って思ったけど・・・リュウさんは本気だった。


「リュ、リュウさん、私お腹空いた!広間に行って何か食べよう?」

「だめだ。使用人に持って来させる」

「え?そんなことしたら部屋に入って来ちゃうでしょ??」

「廊下に置いて行かせるから」

「まさかこのままベッドの上で食べるの?」

「あぁ。俺が食べさせてやる」

「あ、あの。ちょっと休憩しない?とりあえず服を・・・」

「だめだ。これからが本番だ」


リュウさんはそう言うと口の端を上げながら私に覆い被さってきた。


「ちょ、リュウさん!?」


私はそれから本当に三日三晩寝室で過ごす羽目になった。

リュウさんは新婚ならこれが普通だと言い張ってたけど、たぶん違う気がする・・・。


四日目の朝、薄暗い中目を覚ますと、リュウさんが黒いスーツに着替えていた。


「リュウさん、どこ行くの?」

「仕事だ」

「え?それって銀の龍窟の仕事?」

「あぁ。お前はまだ休んでろ」


リュウさんは侯爵になったけれど、マフィアは後継者が見つかるまで続けることにしたそうだ。


「早く帰って来てね?」

「あぁ。暗くなるまでには戻る」

「うん」

「寂しいか?」

「うん」

「また帰ってきたらたっぷり可愛がってやるから」

「えっ?それは遠慮しとく」

「ははっ。じゃあいってくる」

「うん。いってらっしゃい」


私たちはどちらからともなく口付けを交わした。

顔を離すと、リュウさんが「はぁ」とため息を吐いて。


「アニスと離れたくない」


と言うもんだから、私は吹き出した。

私も丁度同じことを考えていたところだったから。


それから数年後、私たちはスーベンでは有名なおしどり夫婦になっていた。


「あ!侯爵様よ!奥様もご一緒だわ!」

「いつ見ても素敵なご夫婦ねぇ」


リュウさんは街を歩く時はいつも私の腰に手を回して日傘をさしてくれる。


「リュウさんちょっと過保護すぎるよ?」

「いいだろう?俺の大切な妻なんだから」


リュウさんはそう言うとレースの日傘をそっと傾けて私にキスをした。


「もう!見られちゃうよ?」


私が顔を押しのけるとリュウさんが優しく微笑んで。


「見られてもいい」


と言うもんだから。


「ふふ・・・そうだね」


私もそっと背伸びをしてキスを返した。


これが、私がすべてを捧げた人と幸せになった、初恋のお話。







fin






二人の恋の行方を最後まで見守って頂きありがとうございました!

大人な男性との初恋物語が書きたくなって書いたお話でした。

でも意外とリュウさんの方がアニスに翻弄されていましたね?

純真無垢というのは怖いものです。笑


次回作も機会がありましたら覗いていただけたら嬉しいです。

ありがとうございました☺️


ぽーりー



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