23 帰還
アニス視点
↓
リュウ視点
「アニス起きろ、もうすぐ着くぞ」
「ん・・・」
あれ?
私いつの間にか寝ちゃってたんだ・・・。
私たちは朝方屋敷を出て、馬車で王都へと向かっていた。
リュウさんはずっと膝枕をしてくれていたみたいで、私の頭を撫で撫でしている。
「リュウさんは?寝てないの?」
私が起き上がろうとすると、リュウさんが背中を支えて起こしてくれた。
「あぁ。寝ないのはいつものことだからな」
「大丈夫?あんなに運動したのに疲れてない??」
「ははっ。あれくらいで疲れるわけないだろう?」
「そうなの?あれが普通なの?」
「あぁ」
そうなんだ?
リュウさんって体力あるんだなぁ。
「アニスは?体は大丈夫か?」
「うん。腰がちょっと痛いけど・・・」
「すまない。手加減出来なかった」
そう言ってリュウさんが私の腰を摩ってくれた。
「大丈夫だよ?私のこといっぱい求めてくれたってことだもんね?」
「あぁ。まだまだ足りないけどな」
「え?そうなの?」
「当たり前だろう?なんなら今から続きをしたいぐらいだ」
「え・・・?リュ、リュウさんがしたいんなら・・・いいよ?」
するとリュウさんは「はぁ」とため息を吐いて片手で顔を覆った。
「アニス、頼むから煽るのはやめてくれ・・・」
「え?煽る?」
煽るって何だろう?と考えていると、大きな我が家がみえてきた。
私帰って来たんだ・・・。
馬車が止まると、リュウさんは私を抱き上げてそのまま馬車を降りてくれた。
なんだかお姫様になったみたい。
門のベルを鳴らすと、泣き腫らした顔のお母さんが玄関から飛び出して来た。
「アニス!!無事だったのね!?」
「お母さん・・・」
お母さんはこれまでにないくらいぎゅっと私を抱きしめた。
「よかった!!あなたに何かあったらと思うと怖くて怖くてたまらなかったのよ??」
お母さんの後ろには疲れた顔のレイさんも立っていて。
「ごめんなさい・・・」
二人に心配をかけてしまったんだな、と申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ロアンネとアニスは中に入って休みなさい。私たちは大事な話があるから」
「そうね。アニス行きましょう」
レイさんとリュウさんは真剣な顔をしながら馬車へと歩いて行った。
リュウさんこのまま帰っちゃうのかな?
ちゃんとお別れを言いたかったな・・・。
お母さんは私を2階の寝室に連れて行くとベッドに横たわらせた。
「危ないことはなかったの?何もされなかった?」
「大丈夫だよ?リュウさんがすぐに助けに来てくれたから」
「そうなのね・・・。彼には感謝しないとね」
「うん・・・。お母さんあのね・・・。私、リュウさんのことが好き・・・」
それを聞いたお母さんは、一瞬驚いた顔をしてからクスッと笑った。
「知ってるわよ。アニスは昔から今日はリュウさんが来てくれた!っていつも嬉しそうに話してたでしょ?」
「ふふ、そうだったね・・・」
「王都に来てからしばらくは元気がなかったようだけど・・・。彼と仲直りできたのね?」
「うん」
「そう。よかったわね」
アニスを誘拐した男たちを引き渡して帰ろうとすると、公爵が俺に頭を下げてきた。
「君には感謝している」
「やめてください。俺が勝手にしたことですので」
「もしかして君はずっと王都にいたのか?」
「いえ。スーベンにいました」
「スーベンに?」
「はい。そこで昨日、雷光の剣がアニスを攫ったとの情報が入ったので、アジトを片っ端から探したんです」
「ははっ。そうか。君にならそんな情報も入ってくるか」
雷光の剣は王都を管轄としている巨大マフィアだ。
ネイルデンを管轄にしている銀の龍窟と雷光の剣はこの国のマフィアの二大勢力と言われている。
「雷光の剣の動きは常に把握していますので」
「そうだろうな・・・。今回は本当に助かった。今後何か困ったことがあれば言ってくれ。力になろう」
「はい」
俺たちはこの時に初めて自然と握手を交わしていた。




