22 初めてをあなたに
「イタ・・・」
「起きたか」
え?
驚いて目を開けると、リュウさんが私を見下ろしていた。
「少し染みるぞ」
「イテ・・・」
「これぐらい我慢しろ」
「う、うん」
なんでリュウさんがいるんだろう?
ネイルデンにいるんじゃなかったの?
色々と聞きたいことはあるけど、私は黙っておでこの手当てをしてくれているリュウさんを眺めていた。
「終わったぞ」
「ありがとう」
「起き上がれるか?」
「うん」
ベッドから起き上がろうとすると、腕にズキっと痛みが走った。
「痛むか?」
「少し」
「あいつら・・・後でボコボコにしておいてやる」
「うん」
起き上がってベッドから出ようとすると、なぜか私はスリップ姿になっていた。
「あれ?ドレスは?」
「あぁ。俺が脱がした。汚れてたからな」
「そ、そっか・・・」
「俺の服ならあるが、着るか?」
「うん」
ベッドから降りてリュウさんのシャツを着ると、膝まですっぽりと隠れてしまった。
それを見たリュウさんがぷっと笑ったから私は頬を膨らませた。
「すまない。可愛くてつい」
また・・・。
そんな言葉にはもう騙されないんだから。
「私帰る・・・お母さんもきっと心配してるし」
これ以上リュウさんといたらまた勘違いしちゃう・・・。
目を合わせたくなくて俯いていると、リュウさんのため息が聞こえた。
「今日はここに泊まれ」
「え・・・でも」
「ここから王都まで三時間はかかる。朝になったら送ってやるから、それまで寝てろ」
もう夜中なのかな・・・。
リュウさんに徹夜で王都まで送れとは言えないか。
「わかった・・・」
「風呂も用意しておいたが入るか?」
そうだ。
教会が汚かったから、きっと全身埃だらけだよね。
「うん。入る」
お風呂から上がると、リュウさんもどこかでお風呂に入ったのか、黒い髪がしっとりと濡れていた。
いつもは後ろで一つにまとめてるのに、今は肩まである髪を解いてて・・・。
「そんなにかっこいいか?」
「ま、またそんなこと言って!」
「ははっ!冗談だ。こっちに来い。髪を乾かしてやる」
ベッドの上に座ってリュウさんに背を向けると、リュウさんがタオルで髪を拭いてくれた。
「伸びたな・・・」
そっか。
リュウさんは髪を伸ばした私を見るのは初めてだよね。
「可愛いでしょ?」
リュウさんの真似をして冗談で言ってみた。
するとリュウさんが髪を拭いていた手を止めて。
「可愛いというより・・・綺麗だな」
と言った。
え?
今私のこと綺麗って言ったの?
信じられなくて呆然としていると、リュウさんが私の肩を後ろに引っ張って。
ポス・・・
そのままベッドに仰向けにされてしまった。
なに??
びっくりしてリュウさんを見上げると、リュウさんが私に覆い被さってきて。
え??
「アニスすまない。これ以上我慢出来そうもない」
「ど、どうしたの?何を我慢してるの?」
リュウさんは返事もしないまま、片手で私のシャツのボタンを外し始めた。
「リュ、リュウさん??」
リュウさんがすごく余裕がないように見えて、私は彼の頬を両手で包み込んだ。
「リュウさん大丈夫?」
「大丈夫じゃない・・・。お前が他の男に汚されるんじゃないかと思うと怖かった・・・」
「大丈夫だよ?何もなかったから」
「何かあったらとっくに相手を殺してる」
そう言って私のシャツを脱がせると、ベッドの下に投げ捨てた。
そしてそのままの勢いでスリップも脱がせようとして、リュウさんは突然手を止めた。
「リュウさん?」
「アニス・・・お前の初めてを俺にくれないか?」
「初めてを・・・?」
「あぁ。お前の初めてが欲しい・・・」
そっか。
ちゃんと私の了承を得ようとしてくれてるんだね。
「うん・・・いいよ・・・私の初めてを全部、リュウさんにあげる」
するとリュウさんは優しく微笑んで、スリップのスカートの裾を持ったかと思うと、ゆっくりと上にあげて来た。
リュウさんは私を生まれたての姿にすると、自分もあっという間に服を脱ぎ捨てた。
スーツを着てたらわからないけど、リュウさんって意外と逞しいんだよね。
私がリュウさんの体に見惚れいていると、それに気付いたリュウさんが笑った。
「ははっ。そんなに見るな」
「ふふ、ごめん」
私も笑うと、リュウさんが私の頬をそっと撫でた。
「アニス・・・今からお前を抱く」
「うん・・・」
「もしも途中で嫌なことがあったら言ってくれ」
「え?」
「言ってくれないと、俺からは止められそうもない」
「ふふ、そっか。わかった」
でもリュウさんにされて嫌なことなんてないと思うよ?
私は両手を広げてリュウさんを受け入れた。
それから私たちは、窓の外が明るくなるまで、ベッドの中で何度も愛を確かめ合ったのだった。




