15 別れの時
アニス視点
↓
リュウ視点
玄関のベルが鳴ったので出てみると、リュウさんが立っていた。
「リュウさんどうしたの??昨日来たばっかりなのに」
「お前に話があってな」
「何?大事な話??」
「あぁ。とりあえず馬車に乗ってくれ」
どうしたんだろう?
リュウさんいつもより元気がないみたい。
馬車に乗ってしばらく坂を登って行くと、見晴らしのいい丘に着いた。
「わぁ!綺麗!」
「西地区まで見えるだろう?」
「あ!ほんとだ!私の家も見えるかな?」
「お前の家はちっこいから見えないだろうな」
「ははっ。そうだよね」
私が笑いかけても、リュウさんはニコッともしなくて。
「リュウさん何かあった?元気ないよ?」
私が袖をクイッと引っ張ると、リュウさんが申し訳なさそうな顔で私のことを見下ろした。
「実は・・・これからはもうお前に会いに来れない」
「え?」
「ちょっと仕事が忙しくてな」
「え?それっていつまで?」
「わからない・・・」
「そっか・・・わかった。じゃあ私からリュウさんに会いに行くよ。それならいいでしょ?」
「ダメだ」
「え・・・?ダメってどういうこと・・・?リュウさん私のこと嫌いになっちゃったの?」
「そうじゃない。お前は今でも大切な友人だ」
「友人・・・」
もしかしてリュウさん、昨日私にしたことを後悔してるのかな?
私が勘違いしてたら困ると思ってる?
「あ、そうだ!昨日のことなら全然気にしてないよ?悪いことしたとか思わなくていいんだよ?リュウさんにとっては挨拶みたいなものだもんね!私勘違いしてないよ?」
「アニス・・・」
「好きになってもらいたいなんて思ってないから、だから、これからも会いに来てよ。毎日だなんて贅沢言わないから、月に1回でもいいし半年に」
「アニスやめろ・・・」
リュウさんがぎゅっと私のことを抱きしめた。
「なんで?なんで会えないの?私のことどうでもよくなっちゃったの?」
「そうじゃない・・・。ただ俺とお前は住む世界が違うんだ」
「どうして?それは今までもそうだったでしょ?私が西地区の子だから嫌いになっちゃったの?」
「そうじゃない・・・。俺はマフィアだから、俺と一緒にいるとお前が危険なんだ」
「リュウさんと一緒にいられるんなら危険でもいいよ?」
「お前に何かあったら母親が心配するだろう?」
「それは・・・」
ずるいよ。
お母さんとリュウさんどっちかなんて選べないってわかってるくせに。
「お前に何かあったら俺が自分を許せないんだ。わかってくれるか?」
全然わからないよ。
一方的に関係を断とうとするなんて酷すぎるよ・・・。
これまでだって私はただリュウさんが来てくれるのを待つことしか出来なかった。
リュウさんにとって、私は会いたい時にだけ会えればいい存在だったの?
私はそこらへんにいる捨て猫と一緒だったんだ?
可哀想だと思ってたまに可愛がるけど、家には連れて帰ろうとはしない。
簡単に見捨てられるような存在だったんだね。
「そっか・・・わかった・・・。リュウさん、これまでありがとう」
「アニス?」
「これからは可哀想な子がいても構っちゃダメだよ?勘違いさせちゃうから」
「それは・・・」
「バイバイ」
「アニス!」
私はリュウさんを振り返ることはしなかった。
初めはアニスを悲しませるくらいなら憎まれた方がましだと思っていた。
好きな女が出来たとか、お前に飽きたとか、傷つける言葉ならたくさんあった。
でも俺は心のどこかで思っていた・・・アニスに嫌われたくないと。
俺のことを好きでいてほしいと。
だからお前のことを思って離れるんだとアニスに言い聞かせた。
本当にずるい男だな俺は・・・。
自分でも呆れて笑いが込み上げてきた。
ははっ。
アニス・・・頼むから俺のことを忘れないでくれ。
新しい世界に行ってもお前は変わらずお前のままでいてくれ。
俺がまたお前を見つけるその時まで・・・。
少年編、これにて完結です。
次回より公爵令嬢編が始まります☺️




