11 またいつでも
別荘に到着すると、屋敷の前にヒューリー公爵の馬車が止まっていた。
やはりここだったか。
俺は連れて来た部下たちに外で待機するように言って玄関のベルを鳴らした。
すると、驚いた表情の公爵が中から出てきた。
「どうして君がここに?」
「確かめたいことがありまして」
「確かめたいこと?」
玄関ホールを覗くと、そこにはいつもと変わらぬ姿のアニスがいた。
「あれ??リュウさん!!」
俺に気付いたアニスは満面の笑みで駆け寄って来た。
「どうしてここにいるの!?」
「アニス、無事だったか・・・。急にいなくなったから心配しただろう?」
「ごめんなさい連絡出来なくて・・・。でも、どうしてここがわかったの??」
ついここまで来てしまったが、言い訳を考えてなかったな。
「実はヒューリー公爵と知り合いなんだ」
「え??レイさんとリュウさんが??」
レイさん?
「そうなんだ。私たちは昔仕事で知り合ってね・・・」
公爵が気まずそうに微笑んだ。
二人はどういう関係だ?
以前から知り合いだったのか?
「ヒューリー公爵、少し外で話せませんか?」
「あぁ。そうしよう」
俺と公爵は、屋敷から少し離れたところに止めてあった俺の馬車に乗り込んだ。
向かい合って座ると、公爵がもう待てないとばかりに口を開いた。
「君とアニスは知り合いなのか?」
それはこちらのセリフだ。
「アニスとは5年程前に知り合いました。公爵こそなぜアニスをご存知なんですか?」
「私は・・・アニスの母親と知り合いでね」
知り合い?
ロイデン伯爵は古い友人と言っていたが。
「それで、二人をここへ?」
「あぁ。少しでも二人の力になりたいと思ってね。この屋敷の管理人をやってもらうことにしたんだ」
アニスの母親を雇ったと言うことか。
そこまでするとは・・・まさか公爵はアニスの母親と。
「君が想像しているような関係ではない」
ははっ。
考えを読まれたか。
「まぁそれでも、私の大事な人ということに変わりはないが」
「アニスが無事ならお二人の関係に口を出すつもりはありません」
「そうか。二人はいい友人のようだな」
友人・・・公爵はアニスが女だということを知らないようだな。
アニスが隠しておきたいのならそのままにしておいたほうがいいだろう。
「たまにアニスの様子を見にこちらに伺っても?」
「あぁ。あの子も喜ぶだろう」
「ありがとうございます」
公爵を馬車から降ろして出発しようとすると、アニスが駆け寄って来た。
「リュウさん、もう帰っちゃうの??」
「ただ無事を確認したかっただけだからな」
「そっか・・・また来てくれる?」
「あぁ。時間があればな」
そんな捨てられた子猫のような寂しい顔をするな。
またいつでも会えるから。
俺が窓からアニスの頭を撫でてやると、アニスは嬉しそうに微笑んだ。
「ふふ。リュウさんまたね」




