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第8話 イカれた目標①

 監禁生活が始まってもう10日。

 食事を運ばれてくる以外で組の人間が部屋に来ることもなく、そのうち存在を忘れ去られてしまうのではないかと不安になってきた頃。

 ようやっと、葛西と矢崎が部屋にやってきた。


「オウッ! 好調か?」


 矢崎は、さも友人を相手にするかのように私とエマに声を掛ける。


「矢崎さん、あんまりにも快適なもんで、このままニートになれるのかと思っちゃいましたよ。ホント、()()()()音沙汰無いんだから」

「ダッハッハ! 金食い虫を養う余裕はねぇよ! こっちも色々とやることがあったんだ」


 私の軽口を聞き流して矢崎は豪快に笑う。

 どうせ碌な事をしていないだろう。

 

「それで、ようやく仕事の話をできると思っていいんですか?」


 私の質問に答えたのは矢崎ではなく、その後ろに控えていたハゲ――葛西だった。

 

「もちろんだ。今日はお前と打ち合わせをしにきた。まずは、タコ部屋に移動するぞ。ここじゃ椅子が足りねぇ」

「タコ部屋って言い方やめない……?」

 

 私の呟きが彼に届くことはなかったらしい。

 返事もなく葛西は顎先で部屋の出口を指し、付いて来いと言わんばかりに歩き始めてしまった。


「行くぞエマ」

「…………」


 これまで毎日一緒に居たせいか、私は自然とエマを引き連れようとしてしまう。

 言葉を口にしてから、どうせ付いてこないだろうと思ったけれど、意外にもエマは素直に私の言葉に従った。



「さてまずは、お前のノルマを提示しておく」


 そう切り出したのは葛西。

 コイツは私がVTuberとして初めに達成するべき目標を定めて来たらしい。


「初配信で登録者 1万人だ。これが達成できないとまともな収益が入らねぇ。これでも雀の涙ほどの金にしかならんが、初動としては悪くない切り出しになる」


 どんな馬鹿みたいな数字を要求されるのか身構えたが、思ったよりも現実的なラインだ。

 あくまで()()()であるというだけで、全く以て簡単な話ではないが……。


「念のための確認ですが、達成できなかったらどうなります?」


 答えは机に頬杖をついてニヤケ面をしてる矢崎の方から返ってきた。

 たったの一言で――。

 

「死ね」


 知ってたけどね……?

 おそらく失敗したら私の内臓たちが世界各国を飛び回ってしまうのだろう。

 本当に、頭がおかしくなりそうだわ。

 

 それに、今のは初配信のノルマでしかない。

 本題はむしろここからだ。


「今のは短期目標っすよね? 中期目標は?」

「半年で登録者50万人、もしくは月間収益 250万の達成」

 

 思った通りの馬鹿げた話だ。

 普通に考えたらありえない数字。でも、コイツらは普通じゃない。

 まともな精神の奴なんぞ()()()()()いない。


 そして、――――私もイカれた人間の一人だった。

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