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第7話 如月ハズレの苦悩

 如月ハズレの優雅な朝は同居人の膝蹴りから始まる。

 同居人のエマさんは普段の無口さや大人しさに反して、寝相がとってもアグレッシブ。

 狭いベッドの上で力いっぱい身体を動かし、私の鳩尾と顎下に大打撃をお見舞いしてくれます。

 おかげで朝の目覚めはベリーバッド!

 二人で使うシングルベッドの上では、殆ど寝がえりをうつスペースなど無いはずなのに、寝た時と起きた時で正反対の方向に頭があるときも……。


 そんなお茶目なエマさんは食事の時間もとぉーっても個性的。

 箸を使うのが苦手なのか、ミニトマトや豆腐をあらぬ方向に弾き飛ばしてしまいます。

 当然、彼女は落ちた食べ物を拾いに行かないので、落ちた物を片付けるのは私の日課です。

 

 そんな自由奔放な彼女ですが、普段はとっても物静か!

 

 私がどれだけ落としたものを片付けるように言い聞かせても返事の 1つもありはしねぇ。

 汚れた服はその場に脱ぎ捨てて別のモノに着替え始めやがる。

 使ったティッシュはその場に落として平然と――――――。


「だああああああああああああああああああああああああああ! お前マジで何なんだよ⁉」


 私の堪忍袋の緒は引きちぎられていた。

 

「うんとかすんとか言ってみろ! 好き放題しやがって!」


 なにが、『部屋の置物として考えるとしよう』だぁ?

 あの時の自分をぶん殴りたい! こんな置物があってたまるかよ!


「…………」


 私がこんなに発狂しても、彼女の心には何も響いている感じがない。

 もしかして耳が聞こえないのだろうか?

 そんなことも思ったけれど、たぶん聞こえてはいるんだろう……。


「チビ」


 エマを貶すと、物凄い勢いでローキックが飛んできた。


「あっぶね!」


 後ろに飛んで彼女の攻撃をギリギリで躱す。

 このように、エマは自分をバカにされると無表情のまま足技を披露する。

 

「あ~、めんどくせぇ。こんなことで体力使ってる場合じゃないのに……」

 

 この場所で生活するようになってから早くも一週間。

 VTuberとしてデビューするまでの残り期間も、おそらく一週間ほど。

 その後、葛西たちからは大した音沙汰がない。

 実際のところ、私はいつになったら活動を開始することになるのか――。

 疑問はあるが、考えても答えが分からない事に脳のリソースを使う余裕はない。

 だから、私は初配信の戦略を毎日毎日、頭から火が出るんじゃないかと思うほど考えることに注力している。

 

 今のところ確認したVTuberの中で、売れている人の配信系統はいくつかに絞られる。


 ・歌うま系

 ・ガチゲーマー系

 ・トークスキルごり押し系

 ・特殊スキル・特殊個性系


 上 3つは天性の才能がないと多分無理だ。

 それなりに歌が上手い、それなりにゲームが上手い、それなりにトークが上手い。これでは上位層のバケモノたちに押し負けてしまう。

 トップを目指して活動するなら、レッドオーシャンと言えるだろう。

 

 如月ハズレとして誕生してから、私は歌を歌った経験も、ゲームをした経験も、人と話した経験も乏しい。

 特にゲームなんて買い与えられたことはないのだから、からっきしだ。


 つまり――。


「特殊系で売っていくしかないよな……」


 ()()()()()()()()でこちらを見るエマをよそ目に、私は自分の思考に潜り込んでいった。

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