MUUNBLOOD
太朗【たろう】:本作の主人公。普通の学校に通う普通の学生。性別は男性
朔久【さく】:太朗の親友。太朗と同じ学校に通っている。性別は男性
覇【はく】:太朗の幼なじみ。性別はどちらでも
美月【みづき】:男勝りな性格の高校生。性別はどちらでも
郁海【いくみ】:美月の友達。性別はどちらでも
晴陽【はるひ】:最初の犠牲者。性別はどちらでも
明日香【あすか】:第二の犠牲者。性別は女性ですが、男性が演じても面白いかも
ゲームマスター:名前不明の謎多き人物。性別はどちらでも
ゲームマスター:さあ、皆様方のお耳を拝借
ゲームマスター:今宵始まるは、命を懸けたゲーム
ゲームマスター:さあ、残酷な物語の始まりです
0:少しの間
太朗【たろう】:ん……、あれ?ここは?
朔久【さく】:太朗!目が覚めたか!
太朗【たろう】:朔久!あれ?俺たち、学校終わってから、お互いに家に帰らなかったか?
朔久【さく】:ああ。だが、俺たち全員気付いたらここにいたんだ
太朗【たろう】:そうなのか……、あれ?なんだか周りが騒がしいな
朔久【さく】:実は、俺たち以外にもここで目を覚ました人たちがざっと10人以上いるんだ
太朗【たろう】:そうなんだ。一体何が始まるんだ?
0:少しの間
ゲームマスター:お目覚めの皆様、ようこそおいでくださいました
美月【みづき】:ちょっと!自分たちを勝手にここに拉致しておいてその言い方は何!
ゲームマスター:混乱していることは承知しております。これから説明いたしますので安心してください
美月【みづき】:はあ!?だったら自分たちに説明してから、この場所に呼べよ!
郁海【いくみ】:美月、落ち着きなよ
美月【みづき】:……、チッ
ゲームマスター:では改めまして……、皆様にはゲームに参加してもらいます
郁海【いくみ】:ゲーム?ところで、君は誰だ?
ゲームマスター:おっと、自己紹介が遅れました。私はゲームマスターと申します。いかなる理由があろうと、私の名前はこれで統一させてもらいます
ゲームマスター:さて、皆様が参加してもらうゲームは、命を懸けたゲームです
太朗【たろう】:命を懸けたゲーム?まさか『デスゲーム』?
ゲームマスター:ほう、なかなかに勘の鋭い方がいらっしゃいましたね。その通りです
朔久【さく】:太朗、知ってたのか?
太朗【たろう】:いや、噂で聞いたことがあるだけなんだ。内容は「突然開催されるデスゲーム。それに参加してしまったら最後、必ず死を迎えるだろう」だったはず
朔久【さく】:え!?マジかよ!?
太朗【たろう】:あくまで噂だから、真実かは分からないけどね
ゲームマスター:なるほど、そういうことでしたか。確かに皆様以外にもこのゲームに参加された方々もいました。その方々がどうなったか……、ご想像にお任せいたします
晴陽【はるひ】:あのー。デスゲームとかどうでもいいので、帰らせてくれませんかね。そろそろ帰らないと怒られるので
ゲームマスター:そうですか、それは残念です。でしたら、あちらの扉からお帰りください
晴陽【はるひ】:え?なんかあっさり帰してくれるな。まあ、言われたとおりにそうさせてもらいます
0:少しの間
晴陽【はるひ】:な、なんだ!?何をする!?う、うわああああああああああああ!!!!!!!!!
0:少しの間
明日香【あすか】:きゃああああああああああ!!!!!!と、扉の隙間から血が……!
ゲームマスター:もし、このゲームに参加されない場合は、強制退場となります
太朗【たろう】:……
朔久【さく】:……
美月【みづき】:……
郁海【いくみ】:……
明日香【あすか】:……
覇【はく】:……
ゲームマスター:おやおや、皆様黙ってしまいましたね。まあ、あんな光景を見てしまってはそうなってしまいますね。しかし、そのおかげで現実味は持てましたね。では、いきなりではありますがゲームの説明をいたします
ゲームマスター:皆様には、6つの部屋でクイズに挑戦してもらい、正解した方は先に進めますが、不正解の方はペナルティ付きの脱落となります
朔久【さく】:……、ペナルティ?もしかして、《死》が待ってる?
ゲームマスター:はい。なので、皆様は命がけで正解してくださいね?では、ゲームを始める前にお言葉を申し上げます
ゲームマスター:今宵は紅く光る満月。新たなる月の王を決めるにはふさわしい夜となりましょう
郁海【いくみ】:?月の王?
ゲームマスター:さあ、ゲームを始めましょう!心の準備ができた方から、目の前にある木の扉へとお進みください
0:少しの間
朔久【さく】:これは逃げられないな。ってか、月の王ってなんのことだ?
太朗【たろう】:わからない。だけど、この先に進めばわかるはずだ。……行こう
朔久【さく】:ああ、頼りにしてるぜ。相棒
太朗【たろう】:それは、こっちのセリフ
0:少しの間
ゲームマスター:第1の部屋へようこそ。ここでのクイズは……、ずばり筆記です
美月【みづき】:筆記?つまり、自分たちの書きを試してるってこと?
ゲームマスター:いいえ。簡単な問題を解いてもらう。たったそれだけです。では、お好きな席へとお座りください。どの席だったとしても、クイズの内容は変わりません
太朗【たろう】:……、これはもしかして
朔久【さく】:どうした?太朗
太朗【たろう】:朔久、こっちの席に座ろう
朔久【さく】:あ、ああ。わかった
0:少しの間
ゲームマスター:皆様の準備が整ったようです。制限時間は10分です。それまでに全て解き終わってください。では、スタート!
太朗【たろう】:えっと、「月の直径は、地球のおよそ何分の1でしょう?」うん、基礎だね。答えは4分の1
朔久【さく】:次は、「日本では、月見の季節になると何を食べる習慣がある?」それは人によりけりだけど、答えは月見団子
美月【みづき】:で、「次に当てはまる漢字を答えよ。あの人はこの業界の何名人だ」えっと、有名人ってことだよね
郁海【いくみ】:「次の数字を平仮名になおせ。298」はあ、分かりやすすぎ。にくや
明日香【あすか】:あれ?意外と簡単。ゲームマスターって人が言ってたことは本当なんだ
覇【はく】:……、なんでだろう。なにか裏がある気がする
0:少しの間
覇【はく】:終わった
美月【みづき】:自分も。ってか全員終わったし
ゲームマスター:皆様お疲れさまでした。ただいまより採点を行いますので、しばらくお待ちください
明日香【あすか】:これって、全員全問正解でしょ
0:少しの間
ゲームマスター:皆様の採点が終了いたしました。おめでとうございます。全員全問正解です
朔久【さく】:おー!全員全問正解!これで全員で先に進めるな
ゲームマスター:では皆様、この先の木の扉へとお進みください
太朗【たろう】:……
朔久【さく】:太朗、どうした?もしかして、違和感に気付いたか
太朗【たろう】:その感じだと、朔久も気づいたな。ああ、なぜ、全員が生き残りやすいクイズになっているのかわからない
朔久【さく】:ああ。まあ、先に進んでみないか?ってか俺たちだけだぜ?あの扉に向かってないのは
太朗【たろう】:そうだね。行こう
0:少しの間
ゲームマスター:第2の部屋へようこそ。ここでは4人協力の鏡合わせに挑戦してもらいます。ですので、今から4人のグループを作り1~12の扉から1つを選んでください
朔久【さく】:4人一組か。あと二人をどうするか……
美月【みづき】:あのさ、人数が開いていたら自分たちもグループに入れてくれないか?
朔久【さく】:ああ、俺はいいが太朗は?
太朗【たろう】:俺もかまわない。俺は太朗だ。よろしく
美月【みづき】:自分は美月。よろしく
郁海【いくみ】:僕は郁海です。よろしくお願いします
朔久【さく】:ため口でいいよ。俺は朔久。よろしく
郁海【いくみ】:そうですか。じゃあ、そうする。よろしく
ゲームマスター:全員グループができたようですね。では、お好きな扉をお選びください
郁海【いくみ】:どの扉にする?
太朗【たろう】:そうだな……、7の扉にしよう。ほかのチームが選ばないだろうから
美月【みづき】:わかるのか?まあ、自分は太朗の意見に賛成
朔久【さく】:俺も賛成。頼りにしてるぜ、相棒
太朗【たろう】:今はそれ言わなくていいだろ。まあ、そっちもな
0:少しの間
美月【みづき】:この部屋は、結構薄暗いけど、よく見たらどっかの洋館の部屋っぽくない?
郁海【いくみ】:確かに、扉の近くに紅いクッションを敷いた椅子が3つあるのは謎だけど
朔久【さく】:そうだな。よく見ると中央には、正方形のテーブルがあって、その上にティーカップとポットがあるな。なぜか右奥のかどに
太朗【たろう】:それだけじゃない。その奥にはバラの花を活けた花瓶があって、その隣にはどっかの夜空を描いた絵画があるな
美月【みづき】:ほかにも、三段の本棚の中にびっしり本があって、テーブルの近くにかわいらしい収納棚がある
ゲームマスター:全員部屋の中に入りましたね。では、30分以内にこの鏡合わせの間から脱出してください。ではスタート!
朔久【さく】:まずは、どうする?
太朗【たろう】:まずは二手に分かれて違いを確認しよう。俺と美月、朔久と郁海のペアでいいか?
美月【みづき】:自分は異論はない。その方が早く終わりそうだしな
朔久【さく】:だな、じゃあ俺たちが向こうの方へ行く。行くぞ
郁海【いくみ】:うん。わかった
0:少しの間
太朗【たろう】:二人とも、そっちはどうだ?そっちに着いたら教えてくれ
郁海【いくみ】:今着いた。で、いろいろ試してみたけど、どうやらこっちで動かして向こうと鏡合わせになるようにしないといけないみたい
朔久【さく】:ああ。だが、俺たちからは太朗たちがいる方向が全く見えないんだ。そっちは?
美月【みづき】:そっか。こっちはうっすらだが二人の姿と部屋の様子が見える
太朗【たろう】:ああ。しかも物を動かすことができない。多分こっちが基本となるところっぽい
朔久【さく】:了解。まずは、バラの本数なんだがこっちは22本あって、絵画の隣にある。そっちは?
太朗【たろう】:こっちは、20本で、位置は同じく絵画の隣でそっちと向かい合わせになってる。となると本数だけが違ってて、正解が21本だな
朔久【さく】:確実にそうだろうな。じゃあそっちにバラを1本やるわ
太朗【たろう】:ああ、ありがとう。よし、バラはきちんと鏡合わせになった
郁海【いくみ】:そういえば、こっちはテーブルの上にティーカップとポットがない
美月【みづき】:じゃあ、それじゃないか?そういえば、その収納棚の中は何もないはずだからその中にあるのかも
郁海【いくみ】:うん。美月の言う通りだね。この中に2つともあったよ。それは美月たちの方のかどに置いて、うんできた
太朗【たろう】:ほかには……
0:少しの間
朔久【さく】:よし、本をきちんと並べ終わったぜ
郁海【いくみ】:ほかに違和感はないから、これで全部かな?
ゲームマスター:7番の部屋に挑戦されてる皆様、おめでとうございます。こちらのテーブルの上にある鍵でこの部屋から脱出できます
朔久【さく】:どうやら、全て鏡合わせになったみたいだな
太朗【たろう】:だな。これで脱出できるようになったっぽいし行くか
美月【みづき】:うん。ここにとどまる理由もないし
0:少しの間
ゲームマスター:7番の部屋に挑戦した皆様が脱出いたしました。4番の部屋に挑戦していた皆様も脱出いたしました……
ゲームマスター:おめでとうございます。全員脱出成功いたしました
明日香【あすか】:めっちゃ簡単だったね。これって誰も死なずに行くんじゃない?
覇【はく】:……
太朗【たろう】:ほかの部屋も俺たちと同じ感じの部屋だったのかな?
朔久【さく】:多分な。まあ、ほかの部屋に入れそうにないからわからないけど
郁海【いくみ】:それより、そろそろ木の扉に向かわない?向かってないの僕たちだけだよ
美月【みづき】:あ、本当だわ。とりあえず行かない?
朔久【さく】:だな。それじゃあ太朗。行くか!
太朗【たろう】:ああ、そうだな
0:少しの間
ゲームマスター:第3の部屋へようこそ。ここでのクイズはいたってシンプルです。月に関するものを私がいる隣の部屋に持ってきてください。
明日香【あすか】:なんだ、今回もものすごく簡単じゃん。早速探そう!
覇【はく】:……、月に関するものか。とりあえず、探そう
朔久【さく】:太朗、とりあえず俺たちも探そうぜ
太朗【たろう】:ああ。……ん?なんだこの本。「月の王国」?初めて見る本だな。一応読んでみよう
美月【みづき】:太朗、なにか見つけた?
太朗【たろう】:いや、まだ
美月【みづき】:そっか。もしかしたら早い者勝ちかもしれないし、急いで探そう
太朗【たろう】:……、「月の王国は、かつて月に存在していた王国。ある日、アポロ11号が降り立ったことで他の星の存在を知った。試しに王族が地球に向かう事になった。その時に王は」
明日香【あすか】:はい!月に関するものを持ってきました!
ゲームマスター:それでは、私に見せてください
太朗【たろう】:ん?隣の部屋の映像が流れている?
ゲームマスター:なるほど、かぐや姫ですか。……、不正解です
明日香【あすか】:はあ?ちゃんと月に関するもの持ってきたじゃん!いや、まだ死にたくない。いや、いやあああああああああああああああ!!!!!!!!
郁海【いくみ】:!?一人殺されたぞ!
ゲームマスター:偽物の月を持ってくることは絶対許されない
朔久【さく】:偽物の月?どういうことだ?
太朗【たろう】:もしかしたら、「その時に王は言った。『民たちよ、我ら王族の血は必ず地球に現れる。月を持つ者たちこそ王族の証だ。その者たちを集め、新たなる王を決めよ』。その後、王族たちは地球へと向かった」くそ、考えが甘かった
覇【はく】:あれ?もしかして、太朗?
太朗【たろう】:え?お!覇か!
覇【はく】:久しぶりだね。太朗
朔久【さく】:太朗、知り合いか?
太朗【たろう】:ああ。覇、こっちは朔久。俺の親友だ。朔久、こっちは覇。おれの幼なじみなんだ
朔久【さく】:よろしくな。覇
覇【はく】:こっちこそよろしく。朔久
太朗【たろう】:みんなはこのクイズはどう思う?
覇【はく】:うーん。まあ、あの感じだとお話とかで出てくる創作の月はダメなんだと思う
郁海【いくみ】:だね。だとすると、月の形をしたものなんだろうけど
美月【みづき】:月の形したものなら、この三日月のネックレスを見つけた
郁海【いくみ】:けど、それが正解かどうかわからないぞ
美月【みづき】:……、ほかの三人はどう思う?
覇【はく】:ぼくは危険だと思う。月の形にもなにかしら条件があるのかもしれないし
朔久【さく】:俺も同じだ。
太朗【たろう】:俺も、この状態でゲームマスターに持っていくのは危険だと思う
美月【みづき】:……、月の形も条件として入ってるのかわかればいいの
太朗【たろう】:そうだけど……、まさか!?
郁海【いくみ】:やめろよ!そうしたら美月が!
美月【みづき】:いいんだ。それでみんなが生き残るなら
太朗【たろう】:……、わかった。美月の覚悟は受け取った
美月【みづき】:ありがとう。行ってくるよ
郁海【いくみ】:美月……、嘘だろ……
0:少しの間
美月【みづき】:……、月に関するものを持ってきました
ゲームマスター:それでは、私に見せてください。……。なるほど、三日月のネックレスですか……、不正解です
美月【みづき】:これで、答えが出たな。あとは頼んだ
郁海【いくみ】:美月ーーーーーーー!!!!!!!
ゲームマスター:今宵の月ではない。よく考えてきたようですが、惜しかったですね。さあ、正しい月を持ってこれる方は現れるのでしょうか?
太朗【たろう】:これで答えがわかった。探そう!
朔久【さく】:ああ!郁海、何してるんだ!早くいくぞ!
郁海【いくみ】:美月、美月が……
覇【はく】:君、さっきの子が大切な人なのはわかるけど、今のぼくたちにできることはさっきの子の分まで生きることだよ
郁海【いくみ】:……、そうだね。美月の分まで生きよう。僕は郁海、ありがとう
覇【はく】:ぼくは覇。いや、ぼくは当たり前のことを言ったまでだよ
朔久【さく】:二人とも、早く探そう。美月の覚悟を無駄にしないためにも
0:少しの間
太朗【たろう】:俺たちは、月に関するものを持ってきました
ゲームマスター:それでは、私に見せてください。……。なるほど、満月のネックレスと指輪、キーホルダー、イヤリングですか……、皆様正解です
朔久【さく】:なんとか通ったな。……、美月を失ったのは重いけど……
郁海【いくみ】:……。美月は、明るくて思い切りがいい子だった。誰に対しても優しくて、壁なんてなくてどんな人でも許していた。僕は、そんな美月に助けられた
覇【はく】:郁海……
郁海【いくみ】:だからこそ、美月の思いを無駄にしたくない!
朔久【さく】:そうだ郁海。その思いで次も突破しよう!
郁海【いくみ】:うん!
0:少しの間
太朗【たろう】:最初はたくさん人がいたのに、あっという間に俺たちだけになったな
朔久【さく】:ああ、そうだな。やっぱ月を見つけるのに苦労したんだろうな
覇【はく】:まあ、あの部屋になんでもあるとはいえ満月のものを探せって方が無理難題だよね
郁海【いくみ】:……。とりあえず、木の扉に向かおう
0:少しの間
ゲームマスター:第4の部屋へようこそ。ここでのクイズは、五つの扉の指示が嘘か真かを見抜き、その指示に従ってください
覇【はく】:でも、いきなりヒントをなしに指示に従えというのは難しいじゃないか?
ゲームマスター:それを見つけるのが皆様のやることです
郁海【いくみ】:そ、そんな……
ゲームマスター:と言いたいところですが、確かにいきなりヒントもなしでは簡単には突破できないので、ヒントを与えます
朔久【さく】:ヒント、一体何が……
ゲームマスター:月が照らすとき光の言葉を、そうでなければ闇の言葉を紡ぐ
覇【はく】:これがヒントだとするということは、覚えとけってことか
太朗【たろう】:ああ、そうだろうな
ゲームマスター:理解が早くて助かります。それでは、スタート
太朗【たろう】:とりあえず、あの扉へ向かおう
0:少しの間
太朗【たろう】:この門みたいな扉がそうだろうな
朔久【さく】:そうだな、ご丁寧に俺たちが見える位置に指示が書かれた看板があるな
覇【はく】:どれどれ……、「砂時計が落ちるまでに扉にある月に触れよ」って書いてある
郁海【いくみ】:一見簡単そうだけど、よく見ると扉の上に黒い月がある
覇【はく】:黒い月?あのヒントの通りならもしかして……
太朗【たろう】:ああ、そうだろうな。黒い月があったら嘘の指示、逆なら本当の指示ってことだろうな
郁海【いくみ】:つまりこれは、月に触れたらだめってことか
朔久【さく】:おそらくそうだろう。とりあえず砂時計をひっくり返すぞ
覇【はく】:わかった
0:少しの間
朔久【さく】:お、正解だったみたいだな
太朗【たろう】:どうやら、俺の読みが当たってたみたいだな
郁海【いくみ】:この調子なら、クリアもできるのかも
覇【はく】:油断しない程度に進もう
0:少しの間
太朗【たろう】:あっという間に最後の扉だな
朔久【さく】:ああ、本当に全員でクリアできるんじゃないか?
覇【はく】:可能性としてはあり得るかもね
郁海【いくみ】:とりあえず、最後の指示を見ましょう
朔久【さく】:そうだな。どれどれ……、は?
朔久【さく】:「一人が月に触れて、血に染まれ」?おいおい、嘘だろ……
郁海【いくみ】:月は……、輝いているね
覇【はく】:嘘……、ここで誰かが犠牲にならなければ扉は開かれないなんて
郁海【いくみ】:……、僕が犠牲になるよ
朔久【さく】:おい、冗談はよせ!
郁海【いくみ】:ううん、本気だよ
覇【はく】:郁海……
郁海【いくみ】:今なら美月の気持ちがわかる気がする。三人とも、僕たちの思いを君たちに託すよ
太朗【たろう】:郁海……、分かった。お前の覚悟は受け取った
郁海【いくみ】:ありがとう。みんなに会えてよかった
0:少しの間
太朗【たろう】:……、扉が開いたな
朔久【さく】:郁海……。お前の思いを、美月の思いと一緒に受け取った
覇【はく】:そうだね。二人の思いを……、ほかの人たちの思いを背負って先に進もう
0:少しの間
ゲームマスター:おめでとうございます。無事突破されたようですね。では、木の扉へお進みください
太朗【たろう】:……、いつまでこれを続けるんだろう?
朔久【さく】:……、それは六つ目の部屋をクリアするまでだろう
太朗【たろう】:……、それまでにこれが繰り返されるのか
覇【はく】:……、おそらく
太朗【たろう】:……、二人は勝手に死なないよな?
朔久【さく】:……、それはわからない
覇【はく】:……、ぼくも
太朗【たろう】:なんでだよ!なんで二人ははっきり答えられないんだよ!
覇【はく】:じゃあ太朗は勝手に死なないとはっきり言える?
太朗【たろう】:そ、それは……
覇【はく】:そういうこと。なにが起こるかわからない恐怖があるから、はっきり答えられないんだ
太朗【たろう】:……、そうだな。ごめん
覇【はく】:いいよ。ぼくも恐怖があるのは事実だし
朔久【さく】:……だが、いつまでもくよくよしていられないよな
覇【はく】:そうだね。……太朗、立てる?
太朗【たろう】:ああ……、行こう
0:少しの間
ゲームマスター:第5の部屋へようこそ。ここでのクイズは、謎解き脱出ゲームです
太朗【たろう】:謎解き?
ゲームマスター:その通りです。皆様の目の前にある紙に謎が書かれています
朔久【さく】:確かに謎解きとかでよく見る感じの文章が書かれてた紙があるな
ゲームマスター:それこそ謎です。その謎を解いてこの部屋から脱出してください。それでは、スタート
覇【はく】:とりあえず中身を見てみよう
太朗【たろう】:そうだな。どれどれ……、「次の文章を読み解き、暗証番号を扉の近くに入力すれば脱出できる」って書いてあるな
朔久【さく】:で、その下の文章は「弥生は文月と仲が良く、皐月と水無は仲が良く、弥生は長月と仲が良く、睦月は水無と仲が良い」って書いてあるな
覇【はく】:その先に文章がないから、この文章が暗証番号のヒントなんだと思う
太朗【たろう】:そうかもな。とりあえず、番号を導き出さないとな
覇【はく】:そうだね。最初の文にある弥生、文月、皐月、水無って和風月名に出てくる漢字だよね?
太朗【たろう】:そうだな、弥生は三月、文月は七月、長月は九月、皐月は五月、水無は水無月のことだから六月、睦月は一月を指すな
覇【はく】:それじゃあ、37563916だよね
朔久【さく】:ああ、そうだろうな。太朗、入力してこい
太朗【たろう】:え?なんで?
朔久【さく】:それは、相棒だからだ
太朗【たろう】:答えになってないぞ。まあ、入力してくる
0:少しの間
朔久【さく】:ところで覇、気付いているか?
覇【はく】:うん、下に小さく書かれた「ただし、ここから出られるのは965203410424」っていう文章だよね
朔久【さく】:ああ。ちなみに数字の部分は、ポケベル文字で「一人だけ」っていう文になる。まさかここで知ってる人がいるのかもわからないポケベルを使ってくるとは
覇【はく】:それは同感。でも、あの感じだと太朗は気付いていないだろうね。こんなに小さく書かれていると見逃してそうだし
朔久【さく】:だろうな。だが、太朗には生き残ってほしくてあえて言わなかった。それは覇も同じだろ?
覇【はく】:うん。太朗はもうここから出れたのかな?
朔久【さく】:おそらくな。太朗は怒るだろうけど俺たちはこれでいいと思ってる
覇【はく】:だね。こんな形でお別れになっちゃったけど、ぼくたちの思いは太朗に託すよ
朔久【さく】:俺たちの最後のわがままだが、絶対生き残れ。そして生まれ変わっても友達で、親友でいよう
覇【はく】:さよならは言わない。だから……、またね
朔久【さく】:また会おうな。太朗
0:少しの間
太朗【たろう】:二人とも、扉が開いたぞ!これで出られる。……ってあれ?二人とも?
太朗【たろう】:!?嘘だろ……。なんで、なんで俺に黙って死ぬんだよ。なんで、俺を一人にするんだよ
太朗【たろう】:……、二人の思い。みんなの思い。確かに受け取った。……、行こう。最後の部屋だ
0:少しの間
ゲームマスター:最後の第6の部屋へようこそ。……おや、あなた様お一人だけですか?
太朗【たろう】:……
ゲームマスター:まあ、いいでしょう。では最後のクイズです。ここでは私の質問に具体的に答えてください
太朗【たろう】:……、わかった
ゲームマスター:では質問です。このゲームの参加者には、ある共通点があります。それはなんでしょう?
太朗【たろう】:俺たちの名前に、全て月が入っている
ゲームマスター:なぜその共通点の人たちを集めたのでしょう?
太朗【たろう】:月の名を持つもの。つまり、月の漢字が入ってる人たちは地球に降り立った王族の末裔で、その中から月の王を決めるため
ゲームマスター:その答えでいいですか?
太朗【たろう】:……、ああ
ゲームマスター:……、正解です。そしておめでとうございます。あなた様が新たなる王です。では、あなたのお名前を聞きましょう
太朗【たろう】:俺は太朗です。ところで、なぜ今までの問題に月に関することの問題を出したんですか?
ゲームマスター:それにはお答えいたしましょう。全て月の王を決めるために必要な、知識があるのか確かめたかったんです
太朗【たろう】:そ、そうですか……
ゲームマスター:よろしいですね?では太朗様、こちらの白き月に触れてください
太朗【たろう】:?なぜ?
ゲームマスター:理由は聞かずに急いで触れてください。それとも、クリア放棄とみなし《強制退場》になりたいですか?
太朗【たろう】:!?触れます。……、あれ?眠気が……
ゲームマスター:太朗様は悪い夢を見ているだけです。どうぞすべてを忘れて眠ってください
ゲームマスター:……、眠りましたね。では、これからのあなた様は、新たなる王『セリーニ様』として目覚めます。そして私は、あなた様の側近です
ゲームマスター:……、太朗様、永遠におやすみなさい
0:少しの間
0:ここからの太朗は、『太朗』ではなく『セリーニ』という別人格が喋っています。声は変えても変えなくてもどっちでも良いです
太朗【たろう】:ん?我は眠ってたのか?
ゲームマスター:おはようございます。セリーニ様
太朗【たろう】:お前は……、そうか我の側近であったな。して、今宵の月は?
ゲームマスター:はい、紅き満月にございます
太朗【たろう】:そうか、贄の準備はできているのか?
ゲームマスター:もちろん。こちらに用意してあります
太朗【たろう】:ふむ……、この死体たちが贄か?
ゲームマスター:はい。その者たちは王に選ばれなかった王族の者たちです。贄として捧げられるのは、彼らにとって本望でしょう
太朗【たろう】:そうか。では、新たなる王の儀式を始めよう
ゲームマスター:はい、では始めます。セリーニ様は目を閉じてください
太朗【たろう】:ああ、わかった
0:少しの間
ゲームマスター:月よ!血に染まりし紅き月よ。ここに新たなる王が誕生した。王の誕生の祝いに贄を捧げ、白き月へと替わり給え
ゲームマスター:どうか王の器『太朗様』に永遠の死を!新たなる王『セリーニ様』に永遠の生を!