3年次小梅寮長交代式
桜寮長が交代した様に、定員80人の防衛医科大学校女子学生寮である小梅寮でも寮長の交代式が行われた。新体制は、山川良子小梅寮長、副寮長に金海セツ菜となった。新5年の旧小梅寮長から、純銀製の小梅が山川良子に受け継がれた。
「大変だけど頑張ってね。」
「はい。ありがとうございます。お疲れ様でした。」
そんな会話が小梅寮長交代式の時には聞かれる。
「お、良子そのエンブレム。しっくり来ているじゃない。」
「つよし?馬鹿にしているの?」
「夫婦同時寮長なんて防衛医科大学校創立以来初めてなんじゃない?」
「副寮長も夫婦だし。」
「こんなに幹部を身内で固めて良いものか?」
「選ぶ方はスコア(点数)しか見てないからな。あいつとあいつが夫婦だから寮長にはしないって事にはならないんじゃねーか?」
「いや、だからこれはたまたま偶然だって。」
「ガチなのね?」
「俺が山川に大事な事をジョークで行くタイプじゃねーだろ?」
「それは分かっているけど…。」
「とりあえずこの一年はパートナーと過ごす時間が減るの覚悟しないとな。」
「あぁ。分かっている。」
「このエンブレム、私には少し重いわ。」
「まぁ、慣れだな。こう言うのはさ。」
「お互い親友が副寮長ってのは助かるよな。」
「ええ。信頼してるし心強いわ。」
「つよし?あんたそのエンブレムに恥じない行動が問われるのよ?間違ってもキャバクラに行って見せびらかしたりするんじゃないわよ?」
「あのぉ?俺既婚者なんだけど?って言うか良子の夫だし…。」
「そこは信頼しているけど、未婚学生は週末にキャバクラに行くって聞くけど?」
「その辺りの風紀も徹底させないとな。」
「同じ男として気持ちは分からなくも無いが、学生手当ては国民の血税で賄われている事を忘れたら駄目だな。」
「なぁ、山川?俺達もう二十歳越えてるんだぜ?そんな事改めて言う事かよ?」
「でも防衛医科大学校学生の名に恥じぬ様な行動を求めるのは幹部学生の役目ではないか?」
「とは言え、独身学生には辛い命令だろうな?」
「私服なら許可するとか?」
「下の世話まで幹部がする必要はない。それぞれの裁量に委ねるべきでは?」
「今の時代マッチングアプリだろ?防衛医科大学校学生と言うステータスに食い込む人間はキャバクラの比ではない。」
「並木ボーイズ…か。」
「合コンとかもガシガシ行くらしいな。男女問わず。まぁ、幹部が個人の行動に介入するべきでは無いんだがな。」
「そこは自己責任だよな。別に訓練や学業に支障がなければ、良いんだよ。でも、先輩達が作り上げて来た防衛医科大学校学生の伝統にはそぐわない。てめぇら、学生のくせに税金で遊んでんじゃねーよと、日本国民に後ろ指指される様な事があってはならんと思うが、このエンブレムには何も関係ない話で、自分さえしっかりしていれば防衛医科大学校学生の伝統は守れるって思ったけど、そう言う次元の話ではない事は、良く分かった。でも、良子と結婚する前にキャバクラ行っておきたかったな…。」
「つよし?あんたもう第1大隊長なのよ?自覚もっと持ちなさいよ。」
「すんません…。」