1年次体育祭
防衛医科大学校の体育祭は、毎年5月下旬に医学科と看護学科の共同行事として行われる。学生中心で企画運営されて、チーム対抗の競技を通じて、人間関係を深めるのが狙いだ。
一番盛り上がるのは騎馬戦で、毎年白熱した闘いが繰り広げられる。
「え?俺ですか?」
「あーあ。お祭り男でクラスのムードメーカーだから体育祭実行委員には相応しい。」
「アメフト部の練習があるのですが?」
「山口には俺から話をつけてやる。」
「申し遅れた。今年度の体育祭実行委員長の4年の馬場だ。よろしく。」
「これって強制ですか?」
「いや命令だ。」
(うわ!自衛隊っぽい。)
こうして山川は体育祭実行委員となった。5年生と6年生は第二大隊に則した生活を送っている為、体育祭は1年生~4年生が取り仕切るのが防衛医科大学校の伝統らしい。とは言え、山川の仕事は今年度の1年生~6年生から代表者の選出をするのと、騎馬戦の運営を請け負う事であり成功させる事であった。
チーム決めは公平をきすため、くじ引きで決める事にした。これが一チーム1年生代表20人~6年生代表20人計120人ものプレイヤーを選出し、管理運営する。各学年の体育祭実行委員は10~20人程おり、それぞれが各種目を担当する。
「ったく良いよな、一兵は?」
「何が?」
「防衛大学校との定期戦ではパスを決めまくってチームの勝利の立役者になるし、体育祭実行委員じゃないのが羨まし過ぎる。」
「そう言うなよ。ま、これも良い経験だと思えよ?」
「うわ!出た、他人事。しかも上から目線。」
「でも、こう言うのも成績に加味されるっぽいし、一兵と雑談してる暇はないんだ。」
「山川探したぞ?」
「馬場先輩すみません。」
「チーム編成まだ確定させて無いだろ?5年生と6年生は俺が確定させるから、1年生~4年生はそこの可愛い娘ちゃんとさっさと確定させて。」
「はい。あのぉ、医学科1年の山川つよしです。よろしくお願いします。」
「え?山川つよし?」
「良子?お前防衛大学校に進学したとばっかり思ってた。腐れ縁ってマジであるんだな。」
「それが久し振りに会った幼馴染みの彼女に言う台詞?」
「お前ら知り合いなんやったか?」
「え?あ、まぁ。ならサクッと終わらすぞ。」
二時間後…。
「1年生と2年生終わりました。」
「3年生も終わりました。」
「5年生と6年生も終わった。」
「4年生もあと10分位で終ります。」
「他にやる事は?」
「実はこの仕事さえ終われば、体育祭は過ぎたる事風のごとしなんだ。」
「お疲れ。」
「馬場先輩!?」
「3人で騎馬戦の割り振りやったんか?マジで凄いな。」
とまぁ、こんな感じで1年次の体育祭はあっという間に終わったのだが、山川の頭の中は幼馴染みの正木良子の事で一杯であった。
体育祭翌日、山川は良子を一兵とセツ菜に紹介した。
「一兵、セツ菜ちゃん、紹介する。俺の幼馴染みの正木良子だ。」
「え?まさかの再会で恋の炎が再燃?」
「まさか。一兵君て変わっているのね?」
「悪い奴じゃないから仲良くしてくれ。」
「一兵、それより今日からアメフト部に復帰や。」
「え?つよしがアメフト?」
「俺から誘ったんだ。半ば無理矢理だったけどね?」
「正木さんも良かったらアメフト部に来てくれない?」
「うん。考えてみる。」