3年次進路相談
この日は、第3学年を対象にした進路相談の日であった。その相談内容は主として防衛医科大学校卒業後の陸海空のどの自衛隊に進むかと言う事であり、第4学年進級時迄に決めなければならず進路相談とは名ばかりで、実際には最終意思確認の場であった。尚、看護科は2年進級時に決定している為、対象外であった。
「山川つよし学生!」
「はい。失礼します。」
「座れ。君は成績優秀であるし、部活動でも活躍している。私生活では山川良子学生と学生結婚して一家の主になっている。君の希望は最優先で決めさせて貰う。ちなみに?」
「航空自衛隊です。」
「分かった。行ってよし。」
「失礼しました。」
「山川良子学生!」
「はい。失礼します。」
「座れ。君は成績優秀だし、結婚しているから一応聞くが希望は山川つよし学生と同じ希望かな?」
「はい。航空自衛隊です。」
「分かった。行ってよし。」
「失礼しました。」
「金海一兵学生!」
「はい。失礼します。」
「座れ。君は常に上位で成績優秀だし、結婚もしている。君の意向は優先して参考にしたい。ちなみに?」
「はい。海上自衛隊です。」
「分かった。行ってよし。」
「失礼しました。」
「金海セツ菜学生!」
「はい。失礼します。」
「君は成績優秀だが、入学当初は訓練に耐えられるか心配したよ?ま、優秀な友人達の支えもありその心配は無くなった。聞くまでもない質問かも知れないが、君の夫である金海一兵学生と進路は同じかな?」
「はい。海上自衛隊でお願いします。」
「分かった。行ってよし。」
「何だこれ?」
「さぁな。これが防衛医科大学校の進路相談なんだろ?」
「全く相談になってないし。」
「ただの意思確認じゃねぇか?」
「全く時間の無駄ね。」
「アンケートとれば良いのに。」
「駄目よセツ菜。核心をついちゃあ。」
「てへペロ。」
この進路相談を経て防衛医科大学校医学科3年生75人の進路が内定した。山川つよし・良子両学生は航空要員として、金海一兵・セツ菜両学生は海上要員として、希望通りの内定を得た。
「とりあえず内定おめでとう。」
「川下一曹!耳が早いっすね?」
「希望が叶って良かったな。」
「もしかして川下一曹知ってたんすか?」
「お前らの顔見て直ぐ分かったよ。いっぱしの防衛医科大学校の専属コックが知るはずないだろ?そんな個人情報。」
「確かに。つーか腹減りました。」
「今週は川下スペシャル第1弾肉祭りで今日は豚丼だ。」
「意味はよく分からないけど美味しそう。」
「これでも一応この調理場の主任なんだぜ?」
「そうなんすか!?」
「そんな事より早く手洗いして来い。」
「はぁーい。」
「豚丼。豚丼。川下主任もしかして帯広で勤務経験ありとか?」
「その主任って呼ぶのはやめろ。帯広には旅行で行ってな。そこの豚丼がおいしいから自分で再現したら、これがめちゃんこ旨くてガチ再現したのよ。それより覚める前に食え。」
「いっただきまーす。」
「激ウマ。ヤバ。」
「タレ旨いっすね?」
「いい肉は中々使えないからな。タレで誤魔化してんだ。」
「白米には最高にあいますよ。このタレ。」
「北海道か…。行ってみたいな。」
「プライベート旅行で行ってみれば?」
「いや、アメフト部の練習ありますから。今年2025年は、学生生活アメフト人生の総決算の年なんです。医科歯科リーグにも上がれましたしアメフトにかけられる人生最後のシーズンが春休みから始まるんです。」
「そうか、青春して来い。」




