3年次慰霊祭
「金海先輩!」
「お、どうした星?」
「慰霊祭って何をするのですか?」
「安心しろ。そう構えなくとも1時間座ってるだけで終わるから。」
「あ、そうなんですね?で何の祭り何ですか?」
「祭り?馬鹿言うな。訓練中の事故や任務中に亡くなった自衛隊員の霊を弔う式典だ。毎年並木祭の直後に行われている防衛医科大学校の恒例行事さ。」
「なるほど。」
「あとは出席すりゃあ分かるよ。貴様ら1年は最前列だからな。眠るなよ?」
「分かりました。ありがとうございます。」
「へぇ。1年の時から寝ている一兵も慰霊祭の趣旨は分かっているんだな?」
「何しろ、2回反省文書かされてるからな。」
「いや、自信持って言われてもだな。」
ブーッ。
「一同起立、かしら中、敬礼、着席。」
「これより第61回自衛隊慰霊祭を執り行う。初めに国家演奏。」
「きみがぁよ…。こけのむすまで。」
「防衛医科大学校学長式辞。」
「えー、本日は…。」
「こっからが睡魔のトラップありすぎんだよな。」
「学長ありがとうございました。続いて代理ではございますが、内閣総理大臣○○様より事ずてを預かっておりますので、僭越ながら私が代読させていただきます。」
(あー、眠いし、かったるい。)
イテッ!?
「何すんだよ、山川?」
「ちったぁ目覚めたか?」
「そう言う事かよ。」
「3年連続反省文なんて嫌だろ?」
「おう。ありがとう山川。」
「続きまして防衛大臣H田様より式辞を賜ります。」
「防衛医科大学校学生諸君。本日は忙しく貴重な時間を拝借する中慰霊祭への参加誠にありがとう。訓練中任務中に亡くなった自衛官達も少しは報われるだろう。私からの式辞は…。」
「一兵あれみろ!最前列!」
「星?あの馬鹿。反省文だな。」
「専守防衛の名の元に儚くも散った諸先輩方の御霊に敬意を表しここに哀悼の意を表する。2024年10月23日防衛大臣H田○○。」
「どこが手短なんだよ?」
「まぁ、学長の式辞に比すれば手短だったんじゃね?」
「最後になりますが…。」
と、前置きを加えた上で、司会者は遺族代表の言葉を代読して、5、6年生のみ献花がおこなわれた。一兵や山川達は、その様子をしっかり記憶した。
「一兵!やったな!一睡もしなかったぞ!」
「大手を上げて喜ぶ事かよ。ま、山川貴様のお陰だ。」
「あちゃ。星の奴呼び出されてる。」
「上からみてもモロバレだったしな。」
「後でどうなったか聞きに行こうぜ?」
「傷に塩塗る真似は止めとけ。」
「2年連続の反省文を書いた経験者のアドバイス。」
「いらねぇ。それ。」
「相変わらずそう言う所性格悪いよな。」
「一兵!」
「セツ菜!」
「今年は眠らなかった?反省文?」
「山川つよし大先生のマンツーマンディフェンスのお陰で終始起きてたよ。ノー反省文!」
「やったね!」
「この二人は本当にめでたいな。」
「そう言うつよしだって去年は危なかったじゃない?」
「え?そうなの?」
「並木祭の打ち上げで二日酔いで…。」
「言い訳は無用よ。どんな状況下でも、与えられたもので当たり前の事をするの。」
「なぁーんだ。山川良子大先生の門下生じゃん俺達。」
「そんな門下生要らないんだけど。」
「ま、とにかく何事も無く無事終了して良かったじゃん。」
結局、星は教官に寝ている所を見られず、幸運にもノー反省文であった。
「星?貴様ガッツリ寝てたけど、ノー反省文とは強運な奴め。」
「それ一兵が言う台詞か?」
「あの?自分全く寝てないんですけど?」
「何?」
「違う奴か?」
「ガビーン。すまん。」
「星、一兵の事をしっかり馬鹿にして良いぞ。俺が許す。」
「山川!」
「貴様だって寝そうだったじゃん?」
「ま、結局誰も反省文書かなくて済んだんだから良しとしようぜ?」




