3年次夏期休暇
結婚して初めての夏休み。金海夫妻と山川夫妻は7泊8日のハワイ旅行に出かける事にした。この時期のハワイは、日本で言えば3月の季節感に近く、ハワイはとても盛り上がっていた。プライベートな旅行なので、制服はタンスにしまい私服での旅行となった。
「一兵?何だよその格好?」
「日本の夏と言えば甚平だろ?」
「セツ菜ちゃんまで、浴衣姿とは。とほほ…。」
「悪くないんじゃない?」
「良子まで?」
「私も浴衣が良かったかも。」
「俺は別に構わないけど。」
「つよし、じゃああんたも付き合いなさいよ。和服ハワイ旅行。」
「はっ?マジ?超絶目立っちゃうけど?」
「周りの目なんか気にする必要など無いじゃん?」
和服でハワイに行った4人は慣れない事をしたと、後悔したが歩くだけでplease take pictureと散々話しかけられ、どこか有名人にでもなった気分になった。3日目辺りになると、ようやくその様な事も無くなり、和服で出かけても、気にされ無くなった。すると、一兵が急にパールハーバーを見に行こうと言い出した。甚平姿の一兵が。セツ菜は頭に?が沢山ついていたが、山川と良子は止めとこうよ。と言う意見だった。
プライベートな旅行とは言え、一応立場的には防衛医科大学校学生の身分。軽々しく行って良い場所ではないと、一兵を説得するのに1日を費やした。
5日目。ホノルル近郊は遊び尽くしたと思っていたが、一兵達はまだまだハワイビギナーズだと言う事を知る。
「はぁ…。」
「どうしたのセツ菜?ため息なんてついて?」
「何か色々疲れちゃった。」
「分かる。私達まだ自衛官の卵だもんね?」
「良子までどうしたの?らしくないぜ?」
「少しはつよしも一兵君も女の身になったらどうなの?」
「はぁ?」
「子供は欲しいけど、せめて防衛医科大学校を卒業するまでは、絶対NG。だって休学出来ないし、子育てしながら医師免許はとれないでしょ?」
「まぁ、確かにな。アメフト馬鹿と優等生にはなぁなぁにしてきた事ではあるな。」
「でしょ?一兵君はどうなのよ?」
「子供は欲しいけどセツ菜と俺の未来を考えたら任官するまでは、そう言う行為は控えるようにしてきたし、それをセツ菜に言わなかったのは申し訳なく思っているよ。」
「お互い分かっているからこそコミュニケーションをとらなくちゃいけなかったのね。」
「って事は一兵、貴様まだ童貞か?」
「良いじゃない。セツ菜だってバージンなんだし。」
「ピュアラブって事にしとけよ。」
「つよし?あんたソーローのくせに威張らないでよ。」
「別にセックスレスでも愛を深められなくはないだろ?」
「山川君?ソーローって何?」
「あーあ。セツ菜ちゃんは知らなくて良い単語だよ。」
「山川君って変態なの?」
「セツ菜?そんなの当たり前じゃん。」
「一兵?てめぇこそ変態じゃねーか?」
「はいはい。この話は終わり。」
と、はぐらかしたが、結局アメフト部の奴等へのお土産を散々買わされ、良子とセツ菜の物欲でごまかした。そんな淡き夏の思い出になった一兵達のハワイバカンスであった。