2年次小梅寮長交代
一方、女子寮の小梅寮でも中隊長兼小梅寮長となる交代式が行われていた。4年生(新5年生)の小山田先輩から、3年生(新4年生)の小田島先輩にバトンタッチされた。
「おめでとうございます。小田島先輩!」
「正木…じゃなくて山川、ありがとな。」
「私何もしてないんだけどね。」
「あ、良いのよ。男子の桜寮長は成績トップが務めるのが慣わしみたいだけど、小梅寮長は自薦つまり、立候補制だから複数人立候補者が出ると選挙になっちゃうのよね。去年も今年もそうならなかったのは、山川派と金海派に別れたおかげなのよ。」
「??」
「私達ってそんなに影響力あります?」
「金海は言うに及ばずの財閥の娘でしょ。それに山川も結構女子学生の間では結構影響力あるのよ?」
(へぇ。私ってつよしと結婚したから女子力あると思われてるのかな?いや、ただセツ菜の親友ってポジションにいるだけよね。)その通り、あの金海財閥の娘である唯一無二の親友であると言う事だけで、名を上げていたのだ。
「え?小梅寮長は小田島先輩?」
「セツ菜何見てたのよ?まさか一兵君の事考えてたの?」
「来年はセツ菜ちゃんと良子が小梅寮長選挙を争う訳だな。」
「ちょっと、つよし?その話するとセツ菜気を悪くするの。私とは争いたくないみたい。」
「そりゃあそうだよ。でも、俺だって一兵と桜寮長を争う身な訳だし、正直やり合いたくはない。」
「あれ?一兵君は?」
「アメフト部の部長選挙。」
「つよしは行かないの?俺には関係無いって言うか興味がない。」
「後で一兵君にしこたま怒られるわよ?」
「山川!」
「一兵!」
「俺部長に成ったよ!」
「おめでとう!」
「丸道先輩に20票差だった。」
「つーか何で飯食ってんだよ?」
「興味がないんだよ。誰がアメフト部の部長になっても俺はただの部員。」
「一兵君ご飯食べないの?」
「今は良いかな?」
「ほらつよし言ったじゃない。一兵君怒っちゃったわよ。」
「御馳走様俺先行くわ。」
カチッ。
「ふーっ。いたのか?」
「やっぱここか。」
「山川?俺が部長だと何か都合悪いんか?」
「んな事はないけどさ。さっきも言ったろ?誰が部長でも、関係無い。だからアメフト部の部長選挙には欠席させてもらった。」
「それならそれで一言あって然るべきだろう?」
「まさか今年出るとは思わなくてよ…。」
「俺も成れるとは思わなくてよ。」
「ふーっ。すまん。」
「タバコ吸ってる時に言う台詞じゃねーな。」
「ま、一兵と俺の仲じゃないか。」
「セツ菜ちゃんも知らなかったみてーじゃねーか。少しスタンドプレーが過ぎたんじゃねーか?」
「かもな。でも俺に1票を投じてくれた部員の気持ちを大切にしたい。」
「20票差って圧勝じゃねーか。」
「ま、相手が丸道先輩じゃあ仕方ねーか。」
「俺、飯食って来る。」
「急げ!」
「おう。」
「俺は風呂入ってくる。」
「一兵君、つよしと仲直り出来た?」
「ああ、タバコの力でね。」
「それは良かった。部長になると色々大変だよ?」
「お二人のお力をお貸しください。」
「はーい。」
「マネージャーも、もっと増員して欲しいわ。」
「勧誘頑張ろ!」
「そうだね。」
「ちゃんとやるよ。」
そう答えるのが今の一兵には、精一杯の答えだった。