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2年次桜寮長交代式

 今年もこの季節がやって来た。第一大隊長(桜寮長)の交代の日である。現第一大隊長土田先輩から、アメフト部の先輩である上山先輩に伝統ある第一大隊長のたすきがかけられた。

 「頼むぞ!上山!」

 「はい!」

 たったのこれだけなのだが、防衛医科大学校学生にとっては節目の伝統ある行事である。

 「上山先輩、ファイトっす!」

 「おう!」

 第一大隊長は中隊長や小隊長毎の外出泊の許可を出すのが日課であり、大隊長手当てが学生手当てとは別に支給される。防衛医科大学校の第一大隊長は、クラスヘッド(成績トップ)の者しか成れず、新4年生になる現3年生のクラスヘッドが務めるのが慣わしである。

 「一兵?飯行くぞ!」

 「ああ、そうすっか。」

 「え?上山先輩が第一大隊長に?」

 「ああ、かなりビックリした。」

 「来年はいよいよつよしか、一兵君の番だね?」

 「どっちがなっても忙しくなるな。」

 「俺はいいや。山川に譲るよ。」

 「何で?」

 「折角アメフト部に成れた訳だし、雑務でアメフト部の活動疎かにしたくないからかな。」

 「って事だよ?つよし?」

 「俺の経歴に花を添える想いだな。」

 「若いの!食ってるか?」

 「川下二曹?食ってますけど?」

 「もう来年の話か?気が早いんじゃねぇ?」

 「聞いてたんですか?」

 「防衛医科大学校では、3年生が一番しんどいって言われているからな。」

 「そうなんですか?」

 「と見受けられる。あくまで俺の主観だがな。」

 「川下二曹も異動とかあるんじゃないですか?」

 「俺?それはお前らにはシークレットだな。」

 「川下二曹の飯食えなくなるなんて、戦意喪失っす。」

 「ワガママを言うな!別に俺一人で飯作ってる訳じゃないぞ?」

 「分かってますよ。俺達と面識がある給養員は川下二曹位なんですよ。」

 「俺もそうやで?声かけてる学生は言ってみればお前らだけやし。」

 「俺は川下二曹の飯が食いたいです。」

 「さっきからその一点張りやな。」

 「私達、将来幹部自衛官になるにあたって、年上の部下とのコミュニケーションの取り方を川下二曹相手に試してるんですよ?」

 「本当なんか?」

 「良子?俺はそこまで深く考えていないぜ?」

 「でも、川下二曹の様に幹部に直球で来る下士官は居ても良いと思います。」

 「セツ菜?ゴマをするような事は言わないの!」

 「だって本当の事だもん。」

 「分かってますよ。来季もお前らの飯はこの俺だ。でも、一階級昇進して、一等陸曹になります。」

 「それマジすか?良かったじゃないすか?」

 「おめでとうございます!」

 「口外禁止やぞ。まだ嫁にも話してないんだから。」

 「後少しで下士官の最上級階級じゃないですか?」

 「そこはあんまり目指してないけどな?」

 「時折出る関西弁がまたグッと来ますね。」

 「つーかお前らいつまで飯食ってんや?まぁ、俺はかましまへんけどな。」

 「防衛医科大学校学生は忙しいですよ?」

 「皆、もうすぐ日夕点呼だ。戻ろうか?」

 「飯食う時間だけがオアシスなんですよ。」

 「一兵!タバコ吸ってるぞ。」

 「ああ!医学生もタバコ吸っても良いっすよね?」

 「マナーを守ってな。」

 「はい!おやすみなさい川下一曹。」

 「おう!お疲れ様。」

 

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