2年次冬季定期訓練③
雪崩による訓練中止はあったが日とコースを改めて50㎞歩走破は行われた。1位はダントツで一兵であった。女子学生のトップは良子、3位にセツ菜がランクインした。総合ランキング1位は一兵で休んでいた山川は10位に終わった。冬季定期訓練は、雪崩のアクシデントはあったが、それ以外は特段の問題もなく終了した。
「はぁ、退院して来たけど、何か顔合わせずらいな…。」
「お!山川お帰り。」
「お、おう。」
「つよし、つまんない顔してないで、何か喋んなさいよ?」
「足の方はもう大丈夫なのか?」
「ああ、お陰様で大した事は無かったよ。皆には心配かけてすまなかった。」
「冬季定期訓練はあのあと、50㎞競歩をやり直してフィニィッシュしたよ。」
「山川無しでライバル不在で張り合う相手がいなかったよ。」
「だろうな。」
「女子の1位は良子さんで、3位にセツ菜が食い込んだ。」
「皆、頑張ったんだな。」
「川下二曹の飯はやっぱマジ旨いっすね!」
「そんなに自衛隊中央病院の飯は不味かったか?」
「舌が慣れてないつーか、病院食ですから。」
「まぁ、生きて戻ったんだから何よりだ。」
「ありがとうございます。」
「おう!一兵!」
「吉永?」
「セツ菜ちゃん。」
「ヨッシー。」
「どうした?」
「俺、陸上自衛隊に行く事にしたわ。」
「そっか、看護学科はもう進路決めなくちゃならないもんな。」
「あーあ。スキー訓練で気持ち固まったよ。」
「じゃあ早坂も?」
「いや、彼女はまだ一年だし決めかねてるって言ってた。」
「まだ付き合っているの?」
「相性抜群だからな。」
「知るかよ(笑)。」
「でも良かったね、ヨッシー。」
「うん、セツ菜ちゃんありがとう。」
「じゃあ俺行くわ。」
「じゃあな。」
「一兵、案外顔広いよな?」
「そんなんじゃねぇやい。」
「御馳走様。俺先行くわ。」
「良子さん?山川の奴何かあったのかな?」
「分からないでも、一兵君に首位をとられてプライドが傷付いたのかもしれない。」
「プライド?そんなちんけなもの。」
「1位をとるのは、つよしにとっちゃ生き甲斐みたいなものだからさ。不運の事故だから仕方無いけど、つよし相当悔しかったみたいだよ?」
「それに結婚して間もないから余計にショックが大きかったのかもしれないよ。」
「まぁ、引きずるタイプじゃねぇーから心配いらねーよ。」
「そうね。もう1週間もすれば、ケロッとしているはずだわ。」
「なぁ、一兵?自衛隊って凄い所なんだな。」
「まぁ、な。そんな所で医官になろうってんだからイカれてるかもな。」
「もう少しで死ぬかもしれない思いをしてまで、また医官を目指すのはイカれているかな?」
「防衛医科大学校学生全員がぶち当たる壁なんじゃない?」
「つーか事故じゃん?そんなの気にするレベルじゃないよ。」
「運も実力のうちって言うだろ?」
「そうだよな。学生長に選ばれた一兵より中隊長の俺の方が期待されてるはず。」
「まぁ、確かに山川が優秀なのは認めるよ。」
「だよな。期末テストでは絶対満点合格してやる。」
「そうそう。そう言う闘志炎上のスタイルが山川の真骨頂だろ?」
「そうだよな。」
「らしくねぇ事はするもんじゃねーよ。」




