2年次冬季定期訓練①
冬季定期訓練は2年次のみ行われるスキー訓練である。特別なスキルを身に付ける訳ではなく、スキーの基本を徹底的に磨きあげ、山岳遭難や、大規模雪害に備える。
「スキーなんて初めてだぜ。」
「私もスノーボードならやったことあるけど。」
「スキーって何かダサくない?」
「自衛隊の訓練科目に入るくらいだ。とにかく重要な事は確かだ。」
「よーし。全員準備は良いな?」
「先ずは10㎞クラシカル×2本と滑降を1本。夕暮れまでに終らすぞ?」
「あのぉ?クラシカルって何ですか?」
「スキーでマラソンをするんだ。この訓練は思ったよりキツいぞ?先輩達も苦労して来たが今年の2年は他の訓練でも軒並優秀だと聞いている。期待しているぞ。」
「小隊長は山川、鈴木、金海。中隊長は山川だ。さぁ、行ってこい。」
「クラシカル1本目はお手並み拝見だな。」
「結構しんどいな。まだ1㎞も来てないのに息上がって来た。ペースメーカーの俺がこんなんではあかん。はぁはぁ。」
「山川!先頭交代するぞ?行ける奴は俺について来い。」
「了解。」
「つよし?大丈夫?」
「おお良子に追い付かれたか。今回の訓練の成績は芳しくないな。」
「弱音吐く前に手と足を動かす!ストックしっかり持って。」
「まだ5㎞もありやがるぜ。」
トップで走破したのは、金海一兵。オリンピアン並の早さで9㎞地点を通過。
「へっ。スキー位楽勝だぜ。でも油断禁物。セツ菜は大丈夫かな?お、もうゴールか?」
「凄いぞ、金海学生!?オリンピアン目指せるぞ?歴代防衛医科大学校学生の中でトップのタイムだ。」
「そんなに早かったですか?」
「2本目も良いタイム期待しているぞ!」
「山川!中隊長の意地見せろ?」
「あと500m!」
「山川ファイト!」
初めてあう挫折であった。山川は全体11位でゴールしたが、満足とはとても言えなかった。2本目も一兵がトップ。山川は2本目は5位と苦手なスキーで意地を見せた。その後、軽食休憩を挟み滑降に備えた。
「うわ、高っ!?こんな所から滑降するの?セツ菜大丈夫かな?」
「高っ。ここが災害現場だとしたら修羅場だな。陸上自衛隊の隊員は大変だな。」
「俺、やっぱ陸上自衛隊無理だわ。」
「よし、ここも決めてやるわ。」
「3、2、1、GO。」
ズシャー。
「おお!行けたぜ。」
滑降では山川がトップであった。しかし、総合ランキングでは3位に終わった。こんな日々を10日間程過ごし、総合ランキングでは一兵がトップ。二位は山川が入り奮闘していた。
「何だかんだで二位に食い込む辺りは流石山川だな。」
「まぁな。一兵に負けたのは初めてだぜ。だが、まだ訓練は残っている。最後には俺がトップになるぜ。」
「セツ菜大丈夫?へたってるよ?」
「もうスキー嫌だ。何であんなに疲れるの?」
「普通にランしてる訳じゃないからな。」
「一兵は異次元よ。」
「そうそう。セツ菜ちゃんの言う通り一兵はレベチだから劣等感を感じる必要はないんだよ?」
「つよしは流石の適応性だね。慣れたらあっという間。」
「まぁな。異次元のタイムの一兵に負けてられんからな。」
「そんなライバル視するなよ?」
「俺はいつも一兵に負けてられんからな。挑戦者のつもりだよ?」
「王座は渡さないぞ!例え相手が一兵でもな。」