表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/200

2年次自衛隊観閲式(陸上自衛隊)

 夏休みがあけるとまた、ラッパ生活にひた戻る。それから一週間後の事であった。教官から自衛隊観閲式への参加が2年生全員に通達された。

 「なぁ、一兵?観閲式って何?」

 「陸海空各自衛隊で呼び名が異なるんだけど、今回の観閲式は陸上自衛隊の事を指す。海上自衛隊は観艦式、航空自衛隊は航空観閲式って言う言わば軍事パレードって訳。防衛大学校や防衛医科大学校の学生は研修って形でこれ等に参加するんだよ。」

 「じゃあ今回の観閲式は陸上自衛隊の観閲式って事だな?」

 「多分ね。まぁ、防衛医科大学校学生の身分だから、参加とは言え歩いて終わりって感じだと思うよ?でも頻繁にある行事ではないから、貴重な経験になるのは間違いないよ。」

 「日付見てみろよ。土曜日だぜ?何か休日出勤するサラリーマンの気持ちが理解出来るぜ。」

 「仕方無いよ。平日にやるより休日にやる方が国民へのアピールになるからね。自衛隊の観閲式は土曜日・日曜日にやる方が効果的なんだよ。海上自衛隊の観艦式は4年に1度って決まりもあるし、航空自衛隊の観閲式は2~3年に1度で毎年は行われないんだ。」

 「よーく知ってんだな。一兵は。」

 「その位の情報なら、少しググればすぐ出て来るよ。大したもんじゃないよ。」

 翌朝、陸上自衛隊観閲式当日…。

 「オーイ!一兵?日朝点呼!」

 「今日は土曜日で休みじゃ…無かった!?」

 「教官!」

 「急げ。皆待ってるぞ?」

 「はい!」

 「でもよ、こう言う事は…。」

 「前もって調べなかった俺が悪い。」

 「山川は知ってたんだね?」

 「張り紙の下に小さく日朝点呼ありって書いてあったよ。」

 「うわー。マジで失態。ぐうぐう寝てる場合じゃなかった。」

 「昨日眠れなかったか?」

 「うん。」

 「いつも2200にはピタリと寝てるのに?」

 「飯を食ったら直ぐ行くぞ?」

 「はい!」

 「何だよ?しれーっとしちゃって?」

 日朝点呼には遅れをとったが、0830の集合時間には余裕で間に合った。それからは2年生だけがバスに乗り込み市ヶ谷の防衛省に向かい、1000からの陸上自衛隊観閲式に最後尾から敬礼をしたまま東京の都心部を500メートル歩いた。腕がつりそうになったが、そこは根性で耐えた。でも、見ていた一般客はお目当ての兵器に夢中で、どこか敗戦処理をしている気持ちになった。それもそのはず。マニアックなカメラマンですらスルーするそんな位置を歩いていたからである。

 「ほら行くぞ?」

 「山川?」

 「所詮、俺達はまだ学生。噛ませ犬にすらならない雑兵なんだから、そんな落ち込むなって。防衛医科大学校に帰るぞ?」

 「私なんか敬礼を途中で止めちゃった。馬鹿らしい。」

 「ぶっつけ本番で良くやったよな?」

 「私もそう思う。」

 「セツ菜はちゃんと敬礼を500メートル続けたんだよね?」

 「私も途中で止めちゃった。何して良いか分からなかったから。」

 「そりゃそうだよな。大群衆の前を小銃も持たず手ぶらで敬礼をしろなんて、滑稽だよな。」

 「まぁ、参加の義務は果たしたんだし、これからもその機会はあるかもな?」

 防衛医科大学校では、1~3年生が自衛隊の観閲式への参加の義務があるが、4~6年生は勉学に集中する為、観閲式には参加の義務はない。と言われている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ