2年次夏期定期訓練②
陸上自衛隊の部隊実習は普通科の訓練がメインであった。一兵達は定期訓練にも慣れて来た様で、成績も安定していた。
2年次夏期定期訓練の締めは水泳訓練だった。
「今年の水泳訓練はプールじゃなくて、海で行う。」
と言う訳で来ちゃいました湘南の海。本来ならテンション爆上がりのスポットなのだが、これは訓練。絶対何かある。
「遠泳15㎞!?」
「何か不服か?貴様らの先輩達もなんなくこなしていたぞ?」
「俺、やっとカナヅチじゃなくなったばっかだぜ?ハードルブチ上がりだぜ?がちでヤバイ。」
「大丈夫だ。教官がボートで待機している。本当に死にそうになったら、助ける。だが、甘えるな。本当の現場では何十㎞も泳いで島を目指すなんて事はザラにある。あの旗が見えるか?」
「はい。見えます。」
「あれが、7.5㎞地点。つまり折り返し地点だ。あそこまで行って帰って来るだけだ。野営で記録作った貴様らなら絶対出来る!よーいどん!」
「マジで泳ぎは自信無いわ。」
「良子、頑張ろうね!」
「うん。セツ菜は無理しちゃ駄目だからね。」
来ました山川つよし!今7.5㎞地点に到着。残りは半分の7.5㎞!
「お、山川早いな。もうあの旗がある所まで。」
「尾崎?人の心配している場合か?女子学生にも負けてるぞ?」
「は、はい。」
結局、1位山川つよし、2位金海セツ菜、3位正木良子、尾崎一兵は80人中の56位で何とか完泳した。リタイア者は無し。大きな事故もなく防衛医科大学校に戻った。学校のプールに戻ってからもしごきは続き、一兵は海上自衛隊志望で本気で悩んだが、水への恐怖心は無くなりつつあった。そして、夏期定期訓練最終日まで何とか乗り切り2年次夏期定期訓練はあわただしく終わった。
「やっと川下二曹の飯が食えるぜ。野営とかマジで勘弁って感じだよな。」
「そういやぁ、川下二曹ってレンジャー資格持ってますよね?」
「20年も前の話だ。今はもうあの頃の自分ではないからな。同じ様にやれって言われても無理だな。」
「陸上自衛隊ってストイックじゃないですか?何で陸上自衛隊に志願したんですか?」
「海も空も怖かったからな。」
「それ、マジですか?」
「真面目だよ。(笑)」
「まぁ、自分で言うのもなんだが、しっかり適性をチェックして入隊したのが大きいかな。」
「漠然としたイメージだけで陸海空各自衛隊を決めなかったって事ですね?」
「まぁ、そう言うことだ。今日は牛丼だぞ?」
「お、マジすか?良いっすね。」
「ま、それは人それぞれだからな。こればかりは。志願して行く訳だから、ある程度の覚悟はあるもんだと、上の人達は思っているんだよ。」
「金海学生や正木学生も最初はもやしっ子だったけど、ガッツリしてきたぞ?彼氏達には分からないだろうけどな。ま、ガンガン訓練して俺の飯を食っていれば、マッスルボディにならないはずはない。」
「じゃあ俺達男子学生もすか?」
「それはそうだ。」
「一兵もつよしも腹筋バキバキだったよ?」
「そうか?」
「ま、これから色んな経験をするだろうけど、頑張ろうぜ。」
「はい。明日からは夏期休暇何で事を前に進めようと思います。」
「事を前に進める?」
「あ、ああ。こっちの話なんで気にしないで下さい。」
「そうか?ま、ファイトだ。」
「オス!」