2年次体育祭②
流石に体育祭前3日間は全てのサークル及び部活動が休止され、防衛医科大学校は体育祭モード一色となった。
「吉永?他の看護学科の体育祭実行委員をボイコットしている奴がまだいたら、田口先輩に報告するよ?体育祭の安全運営に関わる事だからな。」
「分かった。」
「何だって?看護学科の2年生の体育祭実行委員が、ボイコットしているって?看護学科の責任者山波?どうなってんだ?」
「なんでも、モチベーションが上がらないとかって。」
「馬鹿か?体育祭は医学科と看護学科の共同行事だぞ?競技に出ないのは構わんが、学生の安全管理は看護学科の仕事だ。しっかりやって貰わないと困る。そこは大丈夫なのか?」
「他学年のメンバーで何とかカバーします。」
「本当何考えているんだ?」
「毎年騎馬戦では少なからず負傷者も出る。他の競技でも、学生の安全を最優先にして行われる。怪我人の応急措置は看護学科の仕事。しっかりしてくれよ。」
結局、吉永以外の看護学科2年生体育祭実行委員は、応急措置のみの参加となった。これは防衛医科大学校始まって以来の重大インシデントであった。競技種目は10工程。
①開会セレモニー
②女子100m×400mリレー
③玉入れ
④男女混合綱引き
⑤昼休み
⑥男子100m×400mリレー
⑦応援合戦
⑧3000m走
⑨騎馬戦
⑩閉会式
となっている。注目は騎馬戦で各学年5騎(4×5=20人)を出して争う。あらかじめ前日練習で、騎馬戦参加者は騎馬の組み方を確認する。防衛医科大学校の伝統の競技の為、ついつい力が入った熱戦となる。大将騎を撃ち取られた学年は敗北となる。その辺りの攻防も見所である。また、応援合戦では、各学年が練習してきたダンスやブレイキン等が披露される。持ち時間は一学年各10分である。
体育祭1日前、朝。
「一兵、おはよう。」
「おはよう、セツ菜。」
「皆、おはYO!」
「つよし、あんたもう体育祭モードね。」
「山川、良子さんおはよう。」
「今日はプレ(前日確認)ですよね?」
「結構緊張するね。」
「吉永?ちゃんと寝た?」
「うん。久し振りに点呼直後に寝れたよ。」
「本来なら、こうやって医学科と看護学科の交流を図るのが体育祭の目的なんだけどな。」
「今はもうボイコットの事は気にしてない。」
「来年はしっかり誘えよ?」
「分かっているって。」
そして、プレも無事終わり体育祭当日を迎えた。
「本日は日曜日なので点呼は通常ありませんが、今日は体育祭の為、点呼をとります。学生長は中隊長に報告して下さい。」
と、アナウンスが流れいつもの日朝点呼が、行われた。
「いよいよだね。」
「おう。」
朝食を俺達は、白線を引いたりして、体育祭の開会セレモニーの時を待った。2023年は防衛医科大学校創立60周年の記念大会と言う事もあり、開会式はセレモニーと呼ばれた。沢山の観客も入り、0900から始まったセレモニーは粛々と進行して、あっという間に午前の競技が始まった。そして、怪我人なく昼休みを迎え午後の競技も進み、応援合戦等をこなし、いよいよ体育祭のメインディッシュ騎馬戦の時を迎えたのであった。