1年次卒業式②
卒業生達は学内の食堂で、一次会を行い二次会は各学生の裁量に任せられていたが、基本的には体裁としての二次会は禁止されている。そのかわり一次会では酒や食事が提供され、川下二曹ら防衛医科大学校炊事班はその準備にてんてこまいであった。それと並行して在校生約400人分の夕食も準備しなくてはならなかった。その為卒業生の一次会は1300~1600で打ち止めとなった。
「一兵、絶対目を開くなよ?」
「お、おう。つーか何これ?」
「良いよ。目を開けて。」
「セ、セツ菜?」
「こんな綺麗な娘ほったらかしてるから、こう言う事になるんだよ?」
「普段はすっぴんだけど、今日は特別よ。」
「セツ菜も素直にならないと。」
「あのぉ、セツ菜すまん。俺が悪かった。許してくれ。」
「私もめそめそして悪かったわ、ごめん。」
「お互いに悪く思っているなら、喧嘩両成敗っていう事で良いかな?」
「ああ。」
「うん。」
「じゃあ4人で旅行行こうね?」
「うん。」
「おお。」
「川下二曹?例の物を宜しくお願いします。」
「何?何?」
「セツ菜誕生日おめでとう!」
「19歳の誕生日おめでとう!」
「ありがとう。皆。このケーキは?」
「つよしと川下二曹が、ね?」
「川下二曹?」
「つよしがお世話になっている炊事隊員の方だよ。」
「川下二曹ありがとうございます。」
「何、これ位雑作も無い事だよ。」
「食べよ?」
「うん。美味しい。」
「本格派のチョコケーキ、マジうまです。」
「エリートも人の子だよな。喧嘩して、和解して、泣いて、笑って。まぁ、誰にでもある事だよな。ここで働いてると、そう思うよ。ま、今日はめでたい日だ。よろしくやりな。」
「ありがとうございます。」
「順番が逆になってしまって申し訳ないが、今夜の夕食は海上自衛隊名物海軍カレーだ。」
「太っちゃうな?」
「そんな事ねぇーよ。このくらいの糖分位どうって事ねぇ。」
「川下二曹の言う事は確かだぜ?」
こうして一兵とセツ菜は仲を取り戻し、1年生の全ての授業と訓練を修了して、7日間の春休みに入った。
「へぇ、箱根にこんな秘湯があるとはな。流石セツ菜ちゃん。飯も旨いし最高だぜ!」
「え?こ、混浴!?」
「見慣れてんだろ?何ビビってんだよ?」
「タオルで隠すよな?」
「はぃ?旅行で来てんだぞ?夜になってしたくなりゃあパートナーだっているんだし、何を迷っているんだ山川?」
「そうなんだけどさ、俺チェリーなんだよね?」
「マジか?良子さんガード固いの?」
「いや、俺の日本刀が役立たずで、医者に見てもらったらEDで、今はもう治りかけているんだけど、そう言う報告って…聞いてたんかい?」
「どこから聞いてた?」
「俺の日本刀が…。の辺りから。」
「男山川つよし、今夜正木良子に愛の決闘を申し込む‼」
「役立たずの日本刀じゃなければね?」
「私もやりたい。愛の決闘!」
「セツ菜何するか分かっているの?」
「そこは一兵のリードが必要だろ?」
と、まぁ春休みもあっという間に過ぎ去り、俺達防衛医科大学校第59期生は2年生に進級した。




