1年次小梅寮長交代式
80人程の女子寮である(1年生20人×4年生)小梅寮でも、寮長の交代式があった。左門中隊長兼小梅寮長から、3年生女子成績トップの小山田先輩に寮長が引き継がれた。
「小山田、小梅寮をよろしくね!」
「はい!」
「金海?どうしたの?」
「いや、こう言うのは初めてで。感動しちゃって。」
「若いわね。でも来月からは後輩も入って来るんだから、もっとしっかりしなくちゃ駄目よ?」
「はい。」
こうして20人の小梅戦士が第二大隊付けとなった。
「セツ菜大丈夫?」
「うん。ありがとう良子。」
「左門先輩の言う通りしっかりしなくちゃ駄目よ?」
「うん。」
「落ち着いたら夕食に行こう?」
「うん。お腹すいた。」
「おーい!セツ菜と良子さん!」
「どうだった?小梅寮長の交代式?」
「セツ菜が号泣して大変だったのよ。」
「マジか?セツ菜ちゃん大丈夫?」
「本当だ。目が真っ赤だ。」
「一兵っ!」
「おーっ。おう。分かった分かった。」
「流石は一兵君。私じゃ駄目だったみたい。」
「セツ菜、ここは食堂だ。飯食ったらいくらでも泣こう。な?」
「うん。」
「そんなに感動したのか?」
「うん。初めてだったから。」
「じゃあ卒業式はもっと泣くのか?」
「いや、もう大丈夫。」
「本当?凄く恥ずかしかったんだから。」
「ごめん。良子。」
「もう可愛いなセツ菜ちゃんは。」
「良子は泣かないの?」
「下らない事聞いてないで食べなさいよ。」
「はーい。」
「セツ菜マジで飯食えない?無理する事無いんだよ?」
「お腹すいた。」
「セツ菜の学生時代にまた一つ大きな経験が加わったな。でもこれは序の口。防衛医科大学校だぞここわ。」
「今はそっとしてやれよ、一兵?」
「そうだよ一兵君。」
「これはセツ菜の覚悟の問題だ。これしきの事でめそめそして甘やかすべきではない。」
モグモグ、ゴクゴク、ガッシャーン!
「一兵何て大嫌い!」
「おい。傷に塩塗ってどうする?良いのかよ行かせて?」
「ワガママな娘は知らん。」
「一兵ピーンチ。」
「他人事だと思ってからに。」
「一兵君、あれは言い過ぎよ?後で謝りなよ!」
「そうだよ。小梅寮に戻ったら男子は入れないんだぞ?」
「知らん。勝手にしやがれ。」
「つよし、ほっとこう。二人とも自然にヨリ戻すわよ。」
「いや、それにしてもよ…。ま、いっか。飯が不味くなるぜ。ったく。」
「私からもセツ菜に声かけてみるけど、一兵君の方もつよしから言ってあげてね。」
「おう。分かった。今日もお疲れ。」
「良いのか?彼女?」
「川下二曹?」
「こう言うのはな、早く処置するか、ほっとくかの二択なんだ。俺の見立てでは、ほっとく方が良いと思うぜ?」
「人生の先輩のアドバイス、参考にしますよ。」
「今日は飯不味く感じただろ?」
「はい。」
「人間何て生き物はな、単純なものでな。例えお前達防衛医科大学校学生の様なエリートでもな。さっ、風呂に入って勉強勉強!」
「ありがとうございます。」
「最近の若者はセンチメンタルだな。」
「そう言う時期だと思っているんですけど?」
「別れと出会いの季節だしな。」
結局、この件は一兵がセツ菜に謝罪し事無きをえた。それにしても、一兵は言い過ぎた事を深く反省していた。勿論セツ菜も同じである。




