山川の恋
一兵の同期で大親友の山川つよしも、同じく同期の正木良子と言う山川の幼馴染みと付き合っている。彼等の中では直ぐにでも学生結婚を、と考えている様だが、当の山川はポケーッと学業と訓練に勤しんでいる。
「山川君!」
「あ、つよし?何でも無いから。」
「あ、そう。」
「良いのよ。セツ菜が気を使わなくても。つよしはやる時はやる男だから。両家の挨拶も済んでいる。結婚の障害に成るような不安は全くないの。それより医師国家試験に合格出来るかと言う方が心配なの。」
「腐れ縁って表現良くないけど、小学校から高校までずっと一緒で、防衛医科大学校への進学を考えているって言ったら、俺の持頭で受かるならチャレンジしてみるって、浪人覚悟で挑んだの。合格をつよしと私の両方が掴み取れたのは、ほぼ奇跡と言えたわ。」
「へぇ、山川君にとってはビックチャレンジだったのね?」
「そ、良子は確実に受かる為に毎日一緒に俺と勉強して、防衛医科大学校の合格の道を切り開いてくれたんだ。」
「成績的には結構厳しめだったんだけどね。お互いに。」
「つよしなら絶対防衛医科大学校受かるよ。って言われて受験決めた。今となってはそうして良かったと思うよ。自衛隊の生活も楽ではないけれど慣れて来たし。」
「良子は慣れた?」
「うん。覚悟決めたのはつよしと同じ時期だし。」
「高校時代には、今の生活は考えられんかったけどな。」
「そうだね。一般大学とは違うけど、この生活も悪くはないわね?」
「って言うか、やっぱ選ばれし者感無い?」
「それはあるわね。まぁ、最低でも10年は医官をやらなくちゃペナルティだからね。」
「ペナルティっていくら?」
「5000万円。」
「マジか?そりゃあ任官拒否も安易には出来ないって訳か。まぁ、仕方ねぇよ。その分最先端医療をタダで学べるんだから。」
「つよし、入学時より目が格好良くなったね?」
「どういう事?」
「眼力増したと言うか。」
「俺の眼はいつも力強いぞ?」
「そこで、いやぁ、俺の眼は力強くないって謙遜出来ないのがつよしの欠点ね。」
「そう言う良子は眼力あんの?」
「このストレートな瞳。」
「可愛いかって言われたら困るけど、真っ直ぐなのは確かだな。でもよ?もうちょっと麗しい瞳とか目指したら?」
「この際だから宣言しておくけど、私は他の誰でもないつよしに私を好きでいてもらいたいの。」
「あーあ。そっか。良子はそう言うタイプだった。」
「何それ?かなり意味深長なんだけど?」
「普段は気につかないけど、二人の時はマウントとって来るよな、良子って?」
「はぁぁ?最初は意気地無しのつよしから告白して来たくせに。それも初デートの帰り道、ボソッと良子ちゃん俺と付き合ってくれんか?って。」
「まぁ、そんな事もあったけど、これからもよろしくな!」
「うん。」
「良子は陸海空どこに行くか決めた?」
「御給料の高い海上自衛隊にしようと思ってたけど、つよしが航空自衛隊にするって言うから、航空自衛隊に変更する。」
「海上自衛隊なんてやめておけって。ずーっと航海で陸地に戻られない可能性もあるんだぜ?」
「そうだよね…。」
「」




