1年次冬期休暇
何だかんだと気が付けば12月。クリスマスから年末年始にかけての冬期休暇が訪れようとしていた。
「一兵はもうすぐ冬休みだけどどうするの?」
「セツ菜の実家に挨拶に行こうと思っている。」
「お?いよいよ肝がすわったか?」
「ついでに家の実家にも挨拶しておきたいなと思っている。山川は?」
「俺は良子とその家族に経過報告するつもり。つーか、大丈夫かよ?セツ菜ちゃんの実家はあの金海グループだぞ?超が付くほどの大富豪だぞ?」
「ああ、慎重に行くつもりだ。」
「それが良い。」
「良子さんは山川と一緒だよね?」
「うん。私の家族と過ごす予定。セツ菜は?」
「一兵と同じだよ。まだ結婚はしてないけど事実上の交際宣言をしに行く。」
「そっか。気を付けてね。」
「ありがとう。良子もね。」
こうして防衛医科大学校は12月24日から1月7日まで2週間の冬休みに突入した。
「ああ。マジで緊張して来た。」
「一兵?鬼に出会う訳じゃないんだから。」
「金海財閥って言えば、日本で5本の指に入る大富豪じゃないか?緊張するよ。」
「ただいま。」
「お、お帰りセツ菜…ん?そちらの方は?」
「防衛医科大学校の同期で、結婚を前提にお付き合いしている尾崎一兵君。」
「どうも尾崎です。」
「ほう。防衛医科大学校に付き合っている彼氏がいるとは聞いていたが、君か。ハンサムだな。まぁ、立ち話もなんだ。あがりなさい。」
「ありがとうございます。」
「ワシが誰か知ってその態度は度胸がいる。流石は自衛隊の幹部候補生。気に入った。ワシは一兵君とセツ菜の結婚を認めよう。」
「パパ?まだ本格的に決まってはいないのよ?」
「いや、セツ菜。こんなハイスペックな彼氏を逃がしたらあかんで。」
「スペックって…。」
「母さんもそう思うだろ?」
「私はセツ菜の信じた人なら誰でも構いませんわ。と言うより、既にあなたが一兵君の事をお気に入りになってらっしゃるじゃない?」
「一兵君酒は飲めるか?」
「一浪してるので昨日20歳になりました。」
「そうか。よしセツ菜、酒を持って来なさい。」
「一兵、大丈夫?」
「ああ、大丈夫。」
「セツ菜の婿と飲める日が来るとは思わなかった。嬉しいな。」
と、まぁ、書くに及ばず予定を変更して飲みまくった。
「って訳で、春休みに帰るよ。ごめんな母ちゃん。父ちゃんにもよろしく伝えておいて。」
「金海財閥の御嬢様に無礼の無い様にね。」
「ああ、元気そうで良かったよ。じゃまた。」
「パパはすっかり一兵の事気に入ったみたいだね。」
「そうね。普段は亭主関白なパパなんだけどね。」
「御父様、また別の日に飲みましょう。」
「ああ、元気でな。また飲もう。」
「何泊もお世話になって申し訳ありません。」
「良いんですよ、気になさらず。セツ菜の大切なフィアンセですから。」
「また、お伺いします。セツ菜行こうか。」
「うん。」
日夕点呼には間に合ったが、正月にしこたま飲んだせいか、酒臭さがとれない一兵であった。




