エピローグ
それから6年後。一兵は一等海佐で自衛隊を退官し、金海グループの執行役員に抜擢された。5人の子供の教育にしっかり関与し、セツ菜は防衛医科大学校の教授となっていた。
一方山川は空将補となり、医官としては珍しい将官に上り詰めていた。今は自衛隊中央病院の副医院長を勤める傍ら二人の子育てに奮闘している。良子は自衛隊を退官し、心療内科クリニックを開設。院長として仕事と子育てを両立させる。その後一兵の子息は全員が防衛大学校に進学して、交流を深めて行く事になる。
「おい!アキラ、タダシ、マナブ?ユイもエリもとっくに出掛けたぞ?今日から幹部候補生学校入校日だろ?」
「行ってきます!」
「くそっ、アイツら!しこたま強い酒飲ませやがって。アキラ兄さん待って、マナブが飯食ってるよ?」
「遅刻したくないから先行くぞ!」
金海一兵とセツ菜の3つ子は全員陸上自衛隊幹部候補生になっていた。双子の姉妹であるユイとエリは防衛大学校の4年生になっていた。
一方山川の二人の子供達は、民間企業に就職した。
「なぁ、一兵?子供達も立派になった事だしまた4人で旅行にでも行かないか?」
「いつもの山川らしくねーじゃねーか?どうした?そんなセンチメンタルな顔して?」
「行くの?行かないの?」
「俺は行く。」
「私達も行く。」
「じゃあ俺も。」
「何だよそれ?空将補のくせに久しぶりの親友との旅行にすら即決出来ないのかよ?良子はクリニック休んで行くって。」
「2泊3日位なんだけど?」
「構わないよ。有休使うから。」
「私沖縄行きたい。」
「良いね。」
「航空機の手配から宿代まで全て一兵君が出してくれるって。」
「流石、天下の金海グループ執行役員!」
「本当に良いの?一兵君?」
「このくらいどーって事ないですよ。」
そして旅行当日…。
「沖縄か?久しぶりだな。こうして4人で行動するの?」
宿も料理も最高だった。
「丁度良かった。実は退官を機に米国に行こうと思っているんだ。良子はどうしたい?」
「クリニックどうすんのよ?私は日本に残る。」
「じゃあ離婚しちゃうの?」
「いや、ほんの2、3年の話だから大丈夫かな。単身赴任って奴。」
「しっかり話し合った方が良いんじゃない?」
「まぁ、もう良い大人何だし?つーか何でこのタイミングなの?」
「つよし?何か言えない事でもあるの?」
「俺はまだ自衛官だからさ。察してくれよ。」
「防衛機密か?」
「まぁ、そんなところかな。」
と言う訳で山川は一人米国ボストンに向かって旅立った。
「引き留めなくて良かったの一兵?」
「セツ菜?分かってないな。山川は自衛官だぞ?何の理由もなくボストンに行くはすがないんだ。それに一度決めたら聞く耳を持たない男だ。それは、理解できるだろ?」
「金海グループの執行役員である俺でも、今の山川を止める事は出来なかった。」
「セツ菜こそ、どうなんだよ?」
「私にだってあるわよ。守りたいものくらい。」
「一兵は分かんないかもだけど、私のゼミ防衛医科大学校では超人気なんだからね。」
「へぇー。初耳。」
相変わらず頑固な4人ではあったが、この4人の人生は続く。たとえこの物語が終わっても。
※この物語はフィクションです。




