単位の取り方①
「あのぉ?小梅寮に行きたいんだけど道分かる?私、金海セツ菜って言います。」
「申し遅れました。俺は尾崎一兵です。金海さん、小梅寮ならあのグラウンドの先だよ。一人で行ける?」
「ちょっと不安かも。」
「仕方ねーな。つーか入隊して何日か経ってるべ?」
「私、場所とか覚えるの苦手なの。」
「同期で友達とかいねーの?」
「まだ挨拶程度の会話しかしてないの。」
「まぁいいや。つーか男子の桜寮の向かいじゃんか?」
「尾崎さん?」
「一兵で良いよ。」
「ありがとう。助かりました。」
「もう場所忘れるなよ?」
「うん。」
「おい、一兵?もう彼女出来たの?」
「山川、違うんだって。ただの道案内。」
「結構な美人さんじゃねーか?」
「本当そんなんじゃないって。」
(金海言うたらあの巨大財閥の金海グループの娘?が何故この学校に?しても美人だな。)
「あ~あ。外出してーな。」
「夏休みまでの我慢だって。」
「一兵は知らないと思うけど、俺には彼女いるんだ。防衛医科大学校の同期で正木良子っていうんだ。」
「へぇ。幼馴染み?」
「腐れ縁って奴かも知れないが小中高と同じ学校なんだ。」
「進路相談したの?」
「いや良子とは俺の話しかしてない。」
「じゃあ良子さんが合わせたんじゃないの?」
「そんな事より、明日単位の取り方の説明があるって言ったろ?」
「ああ。」
「どんな授業受けられるんだろうな?楽しみだわ。」
「つーか一兵はあのハイパー進学校の明王高校出身なのに、何で一浪したの?」
「山川には話してなかったけど、俺東大医学部を目指してたんだ。でも落第してしまって、どうしようかなーって思ってたら、知り合いのおっちゃんに防衛医科大学校の存在を知らされてさ。学費はかかんねーし、月給ありボーナスありって聞いて応募しようとしてたら募集期間終わってて一浪確定。模試ではA判定貰ってたから、学力の心配はしてなかったけど、何しろこの狭き門(80人限定)だろ?必要なのは後は運だけだった。」
「へぇ。そうなの。で一兵は陸海空どこ志望?」
「海上志望かな。山川は?」
「俺は航空志望かな。でも良子が海上志望だから、絶対何で航空なの?って言われると思う。」
「進路決定はまだ先の話だろ?」
「楽しいのはそうやっているうちだけ。それに進級すればするほど、自由度も増すって。」
「本来なら有名私立大学に行く予定だったんだが、進路変更して良かったよ。」
「何で?」
「何でってバイトしなくて良いし、学費はかかんねーし、金海みたいな美人もいるしよ。」
「あのなぁ。山川は彼女いるだろ?」
「それに防衛医科大学校では学生結婚ありらしいぜ?」
「マ、マジ!?」
「おい!尾崎、山川。」
「はい。」
「さっさと風呂はいって、飯食って来い。」
「はい!」
(三期先輩の馬場さんだ!怖ぇー。)
入隊3日目の二人は何とかPM2050の日夕点呼にギリギリ間に合った。