6年次卒業式①
卒業式には家族をはじめ関係各位も参加して例年通り盛大に執り行われた。式は滞りなく進行し山ノ井第2大隊長が送辞を読み上げ、山川つよし学生が卒業生を代表して答辞を述べた。
「医師国家試験を前にして、卒業を大手を振って喜ぶ事が出来ずそれは残念ですが、それでも入学してからここまで、脱落者を出さずに来れたのは、ひとえに防衛医科大学校教官及び教授をはじめとした関係各位の皆様の賜物であります。我々はこれから医師国家試験と言う人生をかけた闘いに挑む事になります。とは言え、それは緒先輩方も通ってきた棘の道であります。思えば入学当初の我々は"もやし"でした。しかし、各種教練・訓練や毎日のトレーニングにより、もやしではなく"大木"たる強靭な肉体を手に入れました。医師国家試験に合格すれば、我々は立派な幹部自衛官になります。しっかりと自覚を持ち、入隊後は即戦力になるように、6年間と言う長い期間をかけて育成されました。自分が後輩に伝えたいのは、医官候補生である前に人に自慢出来る何かを持てと言う事です。何か一つ、これは誰にも負けないものを持てば、部隊に配属されてからも、緒先輩方にも負けず劣らずの必要な存在に成れると思うからです。ちなみに、自分は卒業生の誰よりも学習してきました。結果として6年間首席の座を譲る事はありませんでした。それが私の武器です。努力を継続する事。その武器を手に航空自衛隊に行きます。学生生活を振り返って一番の出来事は、幼馴染みとの学生結婚です。学生結婚が認められているのは、防衛医科大学校の良き風習であると感じています。それから親友との出会い。これも学生生活において得られた大切なものです。別れるのは寂しいですが、友との契りは一生の宝です。我々より一足早く先に部隊に行った看護科の学生との交流も忘れません。何もかも今の昔に思えてなりません。最後に、我々の進学後も入隊後も支えてくれた家族に感謝して卒業の答辞とさせて頂きます。2028年3月5日卒業生代表山川つよし。」
関係各位の祝電や卒業証書授与も順調に済むと、最後は伝統の帽子投げで卒業式は締めくくられた。
「やったな山川!」
「おう。一兵!」
「山川君答辞良かったよ!」
「セツ菜ちゃん、ありがとう!」
「つよし?調子に乗らないでよ?」
「良子?今日1日位良いだろ?」
「まだ私達には医師国家試験と言う難所が残ってるのよ。セレモニーが終わったら勉強よ?勉強!」
「山川先輩!一兵先輩!卒業おめでとうございます。」
「おう。星と山ノ井。ありがとうな。」
「次の時代は貴様らの時代だ。ファイト!」
「アメフト部の方はどうだ?」
「お陰様で部員は100人を越え来期は関東医科歯科リーグのV2がかかっています。どれもこれも一兵先輩達が作って頂いた土台があってこその繁栄です。」
「そうか。良かったよ。星!ありがとう!」
「医師国家試験頑張って下さい。」
「おう。じゃあな。」
こうして在校生とふれ合えるのはここまで。ここから先は卒業生とその家族によるセレブレーションパーティが防衛医科大学校食堂を貸し切って行われる。ちなみに在校生の昼食はSP弁当である。セレブレーションパーティはPM1230~始まった。




