6年次慰霊祭
今年も少なくない自衛官が訓練や任務中の事故で命を落としていた。
「慰霊祭も今年でラストか…。」
「死んで慰霊される側には成りたくないな?」
「冗談はよせ。つーか山川、お前今年も学生代表スピーチだって?」
「断ろうと思ったんだけど、慣例で第2大隊長はスピーチするのが義務とか言われてさ。お陰で寝不足だよ。」
「まぁ、頑張れよ。」
慰霊祭は毎年おごそかに行われる。亡くなった隊員を慰霊する為であるからだ。多い年は数十人と言う年もある。防衛医科大学校最大の行事である並木祭の興奮さめやらぬ中慰霊祭は行われる。亡くなった隊員の多くは1階級又は2階級特進となり、自衛隊内で永久に供養(慰霊)される。
「星や山ノ井には悪いが、学生代表スピーチは俺に敵うまい。」
「(中略)安全保障環境が厳しさを極める中、防衛省自衛隊に置かれましては訓練及び任務中の死亡事例が絶えません。現場の医官だけではそれを減らす事は出来ません。では何が必要か?それをこの慰霊祭の間は考え続けるのです。自衛官とてちっぽけな人間です。ナイフ一突きされただけで死亡するのです。小銃なら2、3発程度でしょうか?」
「(中略)防衛医科大学校学生におきましては先輩隊員の死を慰霊し、同じ事が起きない様にと想いを馳せる事で、現場に出てから何かしらの対応が出来るかもしれません。それぞれの主張はあるかも知れませんが、慰霊祭の1日位は、亡くなった隊員を慰霊しましょう。2027年10月吉日学生代表山川つよし。」
「なぁ?山川?ある事無い事本当どこから湧き出す訳?つーかスピーチ長過ぎだし。たかが防衛医科大学校学生のスピーチに10分もオーバーするって、どういう了見な訳?」
「良いじゃん式が10分オーバーする位?」
「まぁ、変わりにやれよって言われると無理何だけどな。」
「下級生何か寝てる奴いたぞ?」
「士気が低いね。」
「とは言え、俺達も寝てたりしたしな。学年を重ねる事に理解が深まる事を信じたい。」
「山川?ちょっとだけ格好良かったぞ?」
「私も見直した。」
「まぁ、ちょっとだけね。」
「嘘も度が過ぎると美談になるんだな?」
「じゃあ聞くけどさ、カンペ無しで30分も喋れる?」
「無理無理。」
「だろ?これを創立記念式典でもやろーかと。」
「馬鹿か。山川のスピーチってまとまりが悪いんだよね?」
「じゃあ変わりにやれよ?」
「山ノ井や星にやらせろよ。」
「最後の行事だ。悔いは残したくない。それだけ。」
「超絶スーパーウルトラナイススピーチを酷評するとは、流石我妻。」
「そう言う所。過度な表現。どうせそんなこと思ってないのに。」
「診察でもそーよ?5分の診察を無駄話で10分15分かけちゃう医師の典型よ?」
「それは確かだが、山川は頭良すぎてしゃべくり倒すのかもしれないね。」
「プラスにとらえるとね。」
「ま、いずれにせよ御苦労様だな。」




