6年次夏季集中合宿①
「あ~あ。夏休み返上して3週間も集中合宿かぁ…。」
「はい!そこの学生そう言うネガティブな発言は禁止ですよ?貴方は医師国家試験合格の為に"志願"してこの防衛医科大学校に入ったんでしょ?他の学生も同じです。辛いかもしれませんが、この夏季集中合宿を乗り越えれば、かなり合格に近くなりますよ。良いですね?」
「はい!」
「では早速。手元にある昨年度の医師国家試験問題を解いてください。間違えた所はしっかり復習しましょう。」
とまぁ、そんな感じで始まった夏季集中合宿ではあったが、着実に力をつけた事を一兵達は実感していた。
「なぁ?山川?あの講師どこの予備校から派遣されて来たのだろうか?」
「さぁな。夏季休暇中の防衛医科大学校正規教官(教授)ではないのは確かだがな。」
「とは言え飯は3食食わせてくれるし、しっかり風呂や睡眠もとらせてくれる。」
「それはマスト当たり前だろ?」
「でも毎日夜20~22時までの強化授業はしんどいな。」
「まぁ、いつも自習している時間だろ?」
「確かに。」
「毎日10時間、これでもかと勉強するのだが、課題が尽きる事無く出るわ、出るわ。打出の小槌状態だよ。」
「人間は忘れる生き物だからね。体に染み付くまでやらないと駄目なんだよ。」
「にしてもまぁ、6年生全員参加とは、各員危機意識高めなんだね?」
「そりゃ、後半年位だからな。医師国家試験本番まで。医師国家試験に合格できなきゃ地獄を見る事になるのは、防衛医科大学校の1年でも知ってる事だぜ?」
「それにクラスヘッドの山川さまの様に余裕は無いのよ。」
「初日のクラス分け試験でトップ10に入れなかったセツ菜は必死必死。」
「山川に追い付くのが彼女の目標って言ってた。とは言えトップ10に自分だけ入れなかったのが相当悔しかったみたい。」
バタッ…。
「セツ菜?セツ菜?誰か救急車!」
「なんだただの過労か。」
「脱水症と貧血が重なったのでしょう。きちんと食事は取る様に。」
「はい。」
「医者の不養生とはこの事だぞ?」
「ごめん一兵。皆もごめん。」
「頑張るのも良いけど、ペース配分考え様な!」
「ふぁい。」
結局セツ菜は1日入院しただけで、即座に戦線(夏季集中合宿)に戻ってきた。その命がけの頑張りもあってか、中間テストで全体の5位をとり、Aクラス入りを果たした。
しかし、この中間テスト明けからが本当の試練である事に一兵達は気付いていなかった。
「本日から課業に3000メートル走タイムトライアルを組み入れる。」
「マジすか?この40℃に迫る夏の所沢で?熱中症で倒れますよ?」
「勉強にも強靭な体力と精神力がいります。大丈夫です。心配しなくとも日中はやりません。夜やります。」
「3000メートル走だけなら良いんだけど?スペシャルメニューがあると困るな。」
「皆さん安心して下さい。無理はさせませんから。」




