6年次体育祭③
と、まぁ色々あったが、体育祭当日を無事迎えた。一兵や山川ら6年生は円陣を組んだ。
「今日は総合優勝して絶対有終の美を飾るぞ!」
「おー!」
まだ一度も取れていない総合優勝を学生時代最後の体育祭で取る事に気合い充分であった。毎年の事だがギャラリーは少ない。ギャラリーの大半は学生の保護者や友人であり、知名度はお世辞にも高いとは言えなかった。それでも当事者の防衛医科大学校学生達は総合優勝目指して体育祭に臨んでいた。午前の部は何とか推計値でトップになっていたが、モチベーションはまだ上がりきっていなかった。
それでも山川は6年生を鼓舞する。
「皆、ここまでは俺のシナリオ通りだ。」
「はぁ?つよし、それどういう事よ?」
「星(体育祭実行委員長)にエントリーシートの記入を手伝ってくれと言われてな。ちょっと手伝ったのよ。」
「そうまでして勝ちたいか?山川、お前そんな姑息な。」
「よく言うわ。でも俺の姑息なシナリオが通用するのはここまで。優勝の行方を左右する午後の騎馬戦までは予測不能だ。」
「山川君は汚い事していない。」
「セツ菜?」
「エントリーシートの記入は体育祭実行委員長経験者しか出来ない事でしょ?例え不正をはたらいたとしても、3年生以下の学生の事までは全く分からないはず。それにこの僅差の展開は山川君も予測していなかったはず。そうだよね?山川君?」
「セツ菜ちゃんの言う通りや。実際誰コイツ?って思った人間を適当にエントリーしたのに違いない。俺が有利にメンバーをエントリー出来たとしても、それは5年生と6年生だけだ。騎馬戦のメンバーはベストメンバーを組んである。優勝の行方は騎馬戦次第だな。」
と山川は周囲に話していた。
「お、今日のランチはハンバーガーですか?」
「お、やっと来たか山川学生?」
「川下一曹?俺忙しいんすよ?だからすぐ食えるハンバーガーは最高っす。」
「他の3人はとっくに食い終わってるぞ?」
「平民は良いっすね…。第2大隊長は孤独ですよ。」
「よくわかんねーけど、午後も頑張れよ!」
「はい。夕食の打ち上げの方はよろしくお願いしますね!」
「了解了解。」
と、足早に昼食をたいらげた山川は午後のプログラムを確認した。
「400メートルリレーに、綱引きにおおとりで騎馬戦か…。」
「おお!星?」
「山川先輩!」
「どうだ俺の組んだプログラムは?」
「今の所上手く行ってますね。」
「馬鹿野郎!ありがとうございます、だろ?2日もかけて考えたんだぞ?つーか、俺も今日打ち上げ参加して良い?」
「あぁ、全然大丈夫ですよ。寧ろ来てください。ウェルカム、ウェルカムっす。」
「ありがとう。」
「星?お前はプログラム参加しないのか?」
「第1大隊長で体育祭実行委員長ですから。」
「意識高いな。」
「俺なんて全力フル稼働だぜ?」
「このまま病傷人無しで、午後もしっかりやりきりましょう。」
「おう。」
結局6年生は、400メートルリレーで1位。綱引きで2位となり総合優勝に王手をかけて騎馬戦に全てをかける事になった。
「つよし?どこほっつき歩いていたのよ?」
「まぁ、色々あってな。」
「何か怪しいのよね?他に女が出来たとか?」
「馬鹿野郎!そんなはずあるか。それより、騎馬戦で1位なら総合優勝だぞ?セツ菜ちゃん頼むよ!」
「イメージは完璧なのよね?」
「それそれ。優勝するには1位じゃなくちゃ。」
「ここまでは出来すぎだ。後は神頼み。良子、一兵頑張ってくれ。泣いても笑ってもこれがラストだ!」
こうして、騎馬戦(最終種目)が始まった。




