6年次春期定期訓練
「久しぶりの定期訓練だから、ワクワクしてやって来たってのに、防衛医科大学校病院での研修なんて、期待外れも良い所だぜ?」
「その件に関しては俺も山川と同じ思い。でもこれも立派な訓練だし、やるからには気合い入れてやらないとな。」
「そうよ、一兵君の言う通り確かに自衛隊っぽさ?は一ミリもないけど、こう言う研修(訓練)は実地で病院勤務を命じられた時に役に立つはずだよ。」
「では各員、昨日のブリーフィング通り、希望する各科に分かれ訓練を開始せよ。」
「第1班10名内科。第2班10名精神科。第3班10名小児科。第4班10名脳神経外科。第5班10名産婦人科。第6班10名整形外科。第7班10名皮膚科。第8班5名放射線科。」
一つの班があらかじめ定められていたルールに従い、一つの科に3日間ずつ計24日間で8つの科を全て回る。また、どんな理由があるにせよ、医師免許を持たない防衛医科大学校学生は医療行為を行ってはならない。山川と良子は第1班。一兵とセツ菜は第2班にいた。
「結構スケジュールタイトだね?」
「仕方ねぇだろ?あっち(防衛医科大学校病院)の御依頼なんだから。75人も一気に研修するってだけで迷惑な話なのに、先方の依頼を聞かない訳にはいかないだろ?」
「希望する科は初日からの3日間だけってのは鬼だな。」
「色々な科を学べて新たな発見があるかも?」
「そうだな。見識を広めるには良い機会かもな。つーか一兵とセツ菜ちゃん第1希望精神科なの?」
「別に良いだろ?精神科も悪くないと思ってさ。」
「私は一兵が精神科にするって言ったからってだけで特に理由はないの。」
「私だってそうよ?」
「良子も?」
「今から第1希望を決めてる学生の方が少ないと思うけど?」
「まぁ、まだ医師ではないしな。とは言えこの春期定期訓練の責任者は第2大隊長の山川つよしこの俺にあるからな。不祥事だけは起こさないでくれ。」
「昼飯も病院内で?」
「はい。時間のある時に自分のデスクで弁当をかっ込む先生が多いですよ。」
「それも鬼だな。」
「一兵気付けよ?患者に何かあると、いけないからだろ?」
「なるほど。」
「外に出る時は白衣は脱ぐように。」
「はい。分かりました。」
「ここのカレーが旨いらしい。」
「私は蕎麦にしよ。」
「私も。」
「しっかり食っとかないと持たないよ?」
「山川、大丈夫だって。」
「ご馳走様。あれ?一兵君とつよしは?」
「タバコ…。」
「なぁ山川?俺医官になれるのかな?」
「努力次第っしょ!」
「だよな。」




