5年次卒業式①
「丸道先輩卒業おめでとうございます。」
「おぉう。医師国家試験も何とか合格して4月からは陸上自衛隊で研修医生活スタートだ。」
「何故陸上自衛隊に?」
「進学先を聞かれて希望なしと回答したからかな。そう言えばパイの大きな陸上自衛隊に必然的に成る訳だ。」
「頑張って下さいね!」
「おぉう。ありがとう!じゃ!」
防衛医科大学校では今年も医学科の学生全員が医師国家試験を突破し無事卒業の運びとなった。
「ねぇ?つよし?在校生代表の送辞の準備は出来ているの?」
「そんなの楽勝だって。大丈夫だよ。」
「とか言って、昨日寝る直前まで練習してたくせに?」
「万が一にも失敗は許されないからな。それに送辞の文章考えるの俺なんだからな?一兵達がのほほんとしている間にコツコツと努力を積み重ねて来たんだからなマジで。」
「山川がコツコツ?」
「柄に合わないよ?」
「まぁ、見てろって。バシッと決めてやるから。」
「それでは在校生代表として山川つよし第2大隊長より卒業生への送辞を送ります。」
すると山川は登段し胸元から卒業生に送るメッセージの書かれた紙を取り出し読み始めた。
「卒業生の皆様。卒業、そして医師国家試験合格本当におめでとうございます。日々の努力の結果が目に見える形で、結実し本当に良かったと思います。しかし、これは医官としての始まりに過ぎません。今よりも確実に困難な現場で力を発揮出来る様に、この防衛医科大学校での6年間の経験を糧に努力して行って下さい。在校生の模範となって来た卒業生の皆さんならば、確実に次なるステージでも即戦力となれるはずです。不断の努力の大切さを卒業生の皆様に期待し在校生代表の送辞とさせていただきます。2027年3月8日在校生代表山川つよし。」
続いて卒業生代表の上山昇元第2大隊長から答辞が読み上げられた。
「在校生諸君!学校生活はエンジョイ出来ているかい?勉強はもちろん大事だけど、学校行事は積極的に参加して、今しか出来ない貴重な青春を謳歌してくれたまえ。そして教官や教授を始めとした職員の皆様。6年間大変お世話になりました。右も左も分からなかった1年時に比すれば、今の我々は幹部自衛官としての責任と、自覚を獲得した事でしょう。今後の我々を待つのは厳しい現実と過酷な任務でしょう。それでも泣き言は言えません。自ら志願した道ですから。この並木の学舎で過ごした6年間を糧に我々はネクストステージに行きます。山川学生の言う通り、これは終わりではなくスタートです。この確かな経験を持って、これからも頑張って行きたいと思います。2027年3月8日卒業生代表上山昇。」
この答辞と送辞のやり取りは防衛医科大学校の伝統でもある。ネクストステージに向かう卒業生のエールと在校生のエール。医官になっても忘れられない並木の学舎での生活を後にする寂しさと不安。様々な感情がスパークするのが防衛医科大学校の卒業式である。今までは何気無くスルーしていた所があったが、卒業が近付くと、関心を持つようになる。まぁ、そんなものか?いずれにせよ山川つよしは無事大役を勤め上げた。
「つよし、お疲れ様。送辞良かったわよ?」
「山川君格好良かったよ!」
「セツ菜ちゃん、御世辞でも嬉しい。」
「悔しいがまた株を上げたな?第2大隊長?」
「何だよそれ(笑)」




