5年次医師国家試験傾向と対策
この日の課題は医師国家試験の傾向とその対策方法を考えろ。と言うものであった。ガムシャラに取り組んだ過去20年分の医師国家試験過去問にはあるパターン化された部分があり、その対策を進める事は決して難しい事ではなかった。と、担当教官は熱説するが、それだけでは不充分だと指摘する教官もいた。
ただ暗記すれば良かった防衛医科大学校の入学試験とは違い、医師国家試験は応用力も試される。そこをどう乗り切るかが傾向と対策を練る上においては、最重要だと言うのを山川達は胸に秘めた。
「こうした講義をやるって事は卒業して行った先輩達も同じ事してたのかな?」
「まぁ、そう考えるのは自然な事だな。」
「でも、この講座は確実に医師国家試験を突破する為のスペシャル講座だろ?単位には加算されない。」
「まぁ、学生としては単位に加算されなくてもこう言った講座はありがたいよな?一兵みたいにテスト対策をしている学生も現にいる訳で…。」
「現場で即戦力になれなきゃ、医師国家試験を突破しても意味無いよな。」
「それは違うぞ。山川学生。」
「教官!?」
「最初から100%任務をこなせる学生なと、私は見た事がない。とは言え、防衛医科大学校卒業者で医師国家試験に合格した者には、二等陸海空尉の階級が与えられる。階級に見合った能力が求められるのは確かだが、まず出来る事からやる。そうやって行くうちに医官として、だんだん一人前になる。そんなもんだよ。」
「それに山川学生の様に優秀な学生でも、イップスになる例は山ほど見てきた。学生生活と自衛官として活躍出来るかはノットイコールって事だな。」
「はい。」
「つよし?落ち込んでいるの?」
「バァカ。あんなの気にするかよ!学生として最も範を成し5年連続クラスヘッドの俺が、航空自衛隊の医官として活躍出来ないはずがない。」
「強がってるの?ちょっと、あんまりムキにならないでよね?」
「その為に訓練している。この俺が現場ではあまちゃんだと?笑わせるな。」
「山川?教官はそう言う事が言いたいんじゃないと思うけど?」
「そうか?」
「そうだよ。教官は山川を試したんだよ?そうやってムキにならせて、さらに良い成績を修めてもらいたいから葉っぱをかけたんだよ。まぁ、これは俺の勝手な見解だけどね。」
「山川君そう言う所は直した方が良いよ?」
「セツ菜ちゃんまで。」
「セツ菜だけじゃないよ?つよしの周りにいる人間は皆同じ想い。誰もつよしを否定してはいない。」
「熱くなりやすいのは俺も自覚している。そう言う時こそタバコを吸いたい。一兵、一服するぞ?」
「アツいな。」
「今日10℃下回ってるけど?」
「違うよ。青春しているなって事。」
「はぁ…。」
「どう?頭冷えた?」
「あぁ、ニコチンパワーで元気元気。」
「山川は熱しやすく冷めやすい。」
「鉄か俺は?」
「(笑)。」
「飯もシャワーもまだだったな?急ぐぞ一兵!」
「体に悪いのにつよしの奴、親に内緒で高校生の時からタバコ吸ってたの。」
「不良じゃん。」
「ちょいワルね。アイツは。」
「あ、噂をすれば。」
「よ?ちょいワル?」
「何だそれ?」
「高校生の頃の話をセツ菜にしていたの。」
「へぇ。山川の高校生時代?」
「黒歴史だからヤメレ。」
「誰がちょいワルだよ。まぁ確かに今振り返ると暗黒だったかもな。あんま知られたくないけど、別に知られてどうにかなるものでもないしね。」
「しょーもねー奴。(笑)。」




