5年次医師国家試験模試①
秋のイベントラッシュが終わるとようやく落ち着いて勉強に打ち込めるかと思えば、そんな呑気な事を言っていられない事態になる。一年後の医師国家試験の前哨戦とも言える模試が行われる事になった。
「マジ何も準備してなかったわ。マジ、スクランブル。」
「俺も同じく。」
「馬鹿なのあんたら?準備したら模試をやる意味ないでしょ?」
「でも明日の模試は急すぎるよ。」
「セツ菜ちゃんの言う通り通知なく1日前にやります。って奇襲すぎるだろ?」
「まぁ、幸いにもこれが本番じゃないのが唯一の救いだかな。」
「マイルストーンにしなさいよって事でしょ?」
「うわ!?教官来た!」
「はーい。テキスト類はしまってね。机の上にあって良いのは筆記用具だけですよ。」
「午前中は模試。午後はその添削と解説をします。では、よーい始め!」
(うわっ。ここ分かんない。後回しにして出来る所から攻めよう。)
(模試だもんな。百点は無理か…。)
(70%で合格ラインとすると、先ずはそのくらいを目安に。)
(やだなぁ。皆の鉛筆の動く音が二割増に聞こえる‼いや、先ずは深呼吸。)
「やめ!そこまで。解答を止めて下さい。」
「うわ!」
「どうした?一兵?」
「腹減った。」
「はっ!?」
「全エネルギーを頭に集中させたからこんな事に。」
「そんな事するまでもないだろ?この程度の問題?」
「へぇ。つよしは余裕あったんだ?解説が楽しみね?」
(皆、このレベルの問題を地頭で解けちゃうんだ?)
「セツ菜?昼御飯行くわよ?」
「う、うん。」
「そうか…。今日は医師国家試験の模試があったのか?それで5年生は顔色悪いのか?」
「そう見えちゃいます?」
「今日は航空自衛隊名物空揚げ!飯がいくらでも入るぜ!」
「一兵はいつも通りだね。」
「セツ菜?ガチで顔色悪いけど大丈夫?」
「模試がちょっとね。」
「上手く解けなかった?」
「うん。」
「まぁ、模試だから。」
「ここでのミスは本番に活かす為のモノよ。」
「良子ありがとう。」
「午後も頑張ろー!」
「じゃあ良子さん、セツ菜の事よろしくね。俺と山川は一服してくるよ。」
「了解。」
「おい、山川歩きタバコはまずいって。」
「誰も見てやしないって。」
「タバコ没収するよ?」
「ああ、すみません一兵様それだけは。」
「ッハー。たまんねーな。空を見上げると模試の成績なんてどーでもよく感じるな。」
「確かに自然と比べればね。ちっぽけな事だよな。」
「大分ニコチン充分か?」
「ああ。何とか夜までは持つはず。」
「後何分?」
「5分。」
「走るか?」
「おう。E-教室だったよな。」
「間に合った‼」
「遅いわよ?プースカ組?」
「何だよ。プースカ組って?」
「タバコの煙をプースカしてるからプースカ組。」
「5分前行動の精神はどうしたの一兵?」
「飯食って完全復活かよセツ菜?」
「答案用紙返って来るぞ。みんな腹くくれ。」
「腹くくる程のものじゃねーだろ?」
「確かに。」




