5年次並木祭②
天下の防衛医科大学校学生とは言え、拉麺作りは初めての経験で、高校生の時拉麺屋でアルバイトをしていたと言う一ノ瀬学生を中心にD-麺の開発は進められて行った。
「つけ汁を決めてからじゃないと、麺は決められないよね?」
「そうだね。一兵君の言う通りだよ。先ずはつけ汁を作ろう。良子さんはかえし醤油を作ってみて。いきなりダブルスープはハードル高いから。」
「了解。」
「山川君はチャーシュー作りをお願いします。」
「OK。」
「一ノ瀬君?しょっぱい?どう?」
「いや、この位なら合格点。かえしに使えるね。山川君?チャーシュー準備できたら良子さんの作ったかえし醤油に浸けて煮込もう。」
「次は豚骨スープだね。本番では骨から煮込むけど今はこの即席麺の豚骨スープ粉末で代用しよう。魚介スープも即席麺のもので代用しよう。」
「うん。良いと思う。この疑似スープにスーパーで買ってきた生太麺を加えてプロトタイプつけめんの完成だ。」
「どう?セツ菜?」
「スープがインスタントだけど、これでも充分お金とれるんじゃない?」
「ダメダメ。こんなんじゃ客には出せない。けど、麺は太い方が良いことは分かった。魚介濃厚豚骨スープじゃなくて醤油豚骨のダブルスープにしないか?」
「確かに魚介までは手が回らないかもな。一ノ瀬君?どう思う?」
「醤油豚骨濃厚つけめんに方針転換だ。」
「コスパ考えたら、醤油豚骨濃厚つけめんの方が無駄も出ないしな。後は一兵君がどんな麺を用意してくれるかにかかってる。」
「一ノ瀬君?麺の事なんだけど?」
「どうかしたか?」
「当初案では専門店に依頼する予定だったけど、そんなコネもないし、スーパーの生麺の方が調整しやすい。とりあえず近隣のスーパーに依頼してみる。」
「スープが濃いから極太ちぢれ麺が俺は良いと思うんだけどな?」
「ああ、分かってるって。何種類か用意するよ!」
「一兵の奴責任重大なんだぞ?」
「麺は一兵君に任せて、山川君は僕と豚骨を仕入れに行きましょう。かえしの形はほぼ出来ましたから。」
「豚骨って普通のスーパーには売ってないよな?」
「山川君の言う通りです。業者に依頼するのが普通です。」
「一ノ瀬君?近くに良い所がある!」
「食堂ですか?」
「川下一曹に頼もう。川下一曹?豚バラと豚骨が大量に必要なんですけど、ありますか?」
「うちは業者じゃねーんだよ。そう都合よく行くと思うか?」
「確かに」
「とは言え、発注は出来るぞ。防衛医科大学校に出入りする業者の中には、精肉卸しもいるからな。今日はもう無理だけど、明日以降なら聞いてやるぞ?」
「マジすか?じゃあ豚骨100㎏注文お願いします。代金は代引きでお支払いしますので。」
「了解。」
「流石川下一曹。超ファインプレーだぜ。」
「麺買ってきたぞ?細麺から極太麺までストレート麺にちぢれ麺。で?豚骨は発注したか?」
「ああ。川下一曹に頼んだ。それより一兵君麺は冷蔵庫に入れておいて。」
「食堂か!目の付け所が良いね。」
「ちなみに200食発注は可能ですかと聞いたら、貴方防衛医科大学校の学生さん?って聞かれてよ。どうやら毎年そこのスーパーに発注しているらしく、前もって予約してくれれば対応可能って事らしいから、つけ汁の方を完成…って豚骨まだだもんね…。」
「かえしの醤油とチャーシューは良い感じに仕上がっているわ。」
「豚骨はよ来い。」




