5年次夏期休暇
「え?山川と良子さんは学校に残って勉強合宿するの?」
「ああ。教官からもOK貰った。」
「俺とセツ菜も残りたいのは山々なんだけど…。」
「お義父さんがな。」
「パパに顔出さない訳にはいかないわ。」
「一兵、安心しろ合宿は一週間だ。」
「それなら特別訓練と言う事でお義父さんには何とか言い訳出来るか?」
「そう言う事にしておくは。」
っつう事で一兵とセツ菜も、特別訓練ならぬ特別勉強合宿に参加する事になった。
朝はいつもの時刻に起床し、ランニングを30分し、朝食をとる。AM0900から講義室で特訓開始。過去20年分の医師国家試験の過去門を解き、学生同士で採点し合う。正午から一時間は昼休憩。PM1300から再開。PM1700終了。夕食と入浴を済ませPM2000からは自室で自習。自習の内容は自由。PM2200には就寝。そんな生活を7日間も送った。
「この努力の差は大きいね。」
と、主催者の山川つよしは語る。結局7日間の夏期集中特訓で20年分の過去門のチェックが出来たのは、大きい。
「じゃあ俺とセツ菜は実家に帰省するわ。」
「気を付けてね。セツ菜ちゃん。」
「??」
「つよし?一兵君がいるんだから大丈夫だってば。」
「二人は寮に残るんだ?」
「俺と良子だけじゃないぜ?20人位は寮に残るみたいだ。」
「そんなに?」
「じゃあまたな。」
「おう!」
と慌ただしく扶桑寮を後にし、都内にあるセツ菜の実家に帰省した。
「いつも思うんだけどさ、一兵って軽装だよね?」
「そうかもな。」
一兵のリュックサックの中には着替え用の下着と貴重品、スマホや財布が入っている位であった。
「そう言うセツ菜こそ軽装じゃん?」
「実家に帰省するのよ?」
「着替え必要ないんか…。」
と、電車を乗り継いで、到着したのは高級住宅街の白金台だ。
「そう言えば、ここは初めてかも。」
「嘘だぁ?何回か来てるわよ。」
「俺の勘違いか?」
ピーンポーン。
「はぁい。ああ一兵君とセツ菜?入って。」
「ママただいま。」
「お帰りセツ菜。また体大きくなったんじゃない?」
「ただいま戻りました。」
「お帰りなさい。一兵君も大きくなって。」
「一兵君、ちょっと。」
「はい。お義父様。」
「いやぁ、また一回り大きくなって、金海グループの後継者に相応しい体型になったな。」
「パパ?グループの後継者に相応しいとかまだ決めつけないでよ?」
「セツ菜には敵わないんですね?お義父様。」
「良いんだセツ菜。自衛隊に固執するつもりはないからな。違約金の発生しない10年以降はまだ何も決めてない。」
「その時は是非金海グループに来てくれ。」
「考えておきます。」
「ただ今は医師国家試験の合格に集中しています。どうかセツ菜と僕の事を温かく見守って下さい。」
「10年じゃな?」
「貴方?」
「その時はまた聞いて下さい。」
「分かった。」
こうして5年次の夏休みは終わった。




