5年次体育祭③
「なぁ?山川?少し退屈してんじゃねーか?」
「そう言う一兵こそ退屈してんじゃねーか?」
「まぁ、去年までの忙しさに比すれば退屈かもしれないけど、その分勉強にいそしめって事だろう?分かりきった事聞くなよ?」
「ほら、体育祭始まるぞ?」
「楽しむぞ!」
「誰に言ってんだよ?つーか山川は体育祭出ないんじゃなかったの?」
「気が変わった。」
こうして一兵達の5回目の体育祭は始まった。
「セツ菜!」
「一兵?こんな所で何してるの?」
「サボってる。」
「はぁ!?」
「セツ菜もサボろうよ?」
「どーせ騎馬戦以外楽しい競技なんて無いだろ?」
「そうだね!5、6年生はオープン参加だろうしね。」
「単位にも影響はしないしな。」
「騎馬戦までまだ時間あるよね?何する?って言うか一兵は不真面目な所あるよね?前から思ってたけど。山川君と違って。」
「山川と比べるのかよ?」
「だって他に親しい防衛医科大学校学生いないんだもん。」
「別に俺はセツ菜が男友達作るの全然反対していないからね?」
「え?男友達かぁ…。ピンと来ないな。」
「自衛隊って人と人との繋がりじゃん?」
「それと引き換えに他の女子学生と仲良くなろうとは思って無いわよね?」
「図星なのね?」
「いやぁ、あのぉ、そのぉ…。」
「一兵は私の夫なんだからね?」
「それってさ、独占禁止法に抵触していると思わない?」
「一兵は商品なの?一兵のばぁか!」
「医官てさ、他の医師と何が違うと思う?」
「いざという時は戦闘の最前線に立つ事?」
「惜しい。普通の医師は非戦闘地域でしか活動しないけど、自衛隊における医官は、戦闘地域でも医療を行う。いざとなれば小銃を背負い前線の自衛隊員の元へ駆け付ける。勿論自治体の要請があれば、災害派遣にも応える。」
「へぇ。やっぱ一兵って山川君とは全くタイプの異なる医官になりそうだね。って言うかこんな真面目な話は二人っきりの時はしないもんね?」
「そう言うセツ菜こそ、普段はボーッとしているのに、いざとなると覚醒した様に動くよな?」
「二人の将来なんて何も語って来なかったわね私達…。」
「子供の事とかな?」
「気付かぬうちにタブー視してたね?」
「それは私も同感。でも今はまだ…。」
「分かっているよ。そのくらい俺だって。」
「私は一兵じゃなきゃやだよ?」
「当たり前じゃないか?俺もセツ菜じゃなきゃやだよ?」
「それにお義父さんの承諾もまだだしな。」
「え?パパ?」
「俺はもうただの尾崎一兵じゃなくて、金海グループの正統な後継者なんだ。行く先々は自衛隊をやめ金海グループを継ごうって思ってる。」
「それはマジで?」
「ああ、俺の野望さ。10年自衛隊で勤務すれば違約金もなくなる。定年まで自衛隊にいるつもりは無いよ。セツ菜はどっちでも好きな方を選びな。」
「おい貴様ら?こんな所で何している?」
「あ、いたたた…。いやぁ腹が痛くて。妻に介抱して貰ってたんですよ。」
「直ぐに医務室に向かえ!」
「はい。」




