5年次体育祭②
山川や一兵達が指導してきた体育祭実行委員への騎馬戦の安全な運営方法も新入生まで浸透し、これで安全な騎馬戦が行える様になった。とは言え、練習と本番では状況が天と地ほど異なる。そこで、理詰めの教え方ではなく、実戦を想定した模擬戦を行い、何処が危険なのかを体現させた。
「はーい!OK!皆どの形が危ないか理解できたかな?」
「はい。騎馬に乗る騎士に合わせて動いてはいけないと言うの事が分かりました。」
「他には?」
「禁止行為を防ぐ為、騎馬を支える脚を務める学生は冷静さを失わないように騎士を務める学生に声かけを徹底するのが大切だと感じました。」
「OK。本番では体育祭実行委員が中心となって、クールでナイスな騎馬戦を展開してくれ。」
「他に質問がなければ解散にします。」
「では、解散にします!」
「騎馬に乗る人を騎士って言うの初めて聞いたんだけど?」
「私も。」
「私も。」
「命名したのは、マニュアルにそう書いてあったからで、面白よがりで命名した訳とは違うって事は主張しておきたい。」
「本当だ!ここ見て!」
「騎馬に乗る人間を騎士と呼ぶ。(1986年5月改訂)」
「つーか古くね40年近く前のマニュアルって。」
「そんな事より風呂と飯だ。一兵行くぞ?」
「セツ菜!私達も早く風呂とご飯済ませなきゃ。今何時ごろ?」
「PM1940。」
「マジ?大体つよしが、古いマニュアルから引っ張って来た格好良すぎるフレーズのせいで、押せ押せになっちゃったじゃない?」
「愚痴は食堂で聞きますよ?」
シャー「で?何で6年生の仕事を5年生がやる事になったんだっけ?」
「何でって上山第2大隊長のお達しだ。断れるかよ?」
「まぁ、5年生は体育祭でやる事無かったし、この風習は来年から5年生が担当しても良いかもね?」
「まぁ、一応上山第2大隊長には報告しておくけどな。ってそれ俺がやるわけ?」
「前第1大隊長で現第2大隊中隊長の山川以外誰が適任だってんだよ?」
「おい?逃げんなって?山川!」
「そんなに上山第2大隊長が恐いの?」
「いや別に、そんな事はねーんだけどさ。川下一曹今晩わ。」
「何で5年生になっても、体育祭前は忙がしいんだ?」
「実は6年生に仕事を押し付けられたんすよ。」
「そう言うの部隊じゃよくあるぜ?最も今はパワハラに厳しいから少なくはなってきてるけどな。職務上上司の仕事も任されるのが自衛隊って所だ。」
「そうなんですか?」
「まぁ、階級の低い者の泣き所って奴さ。まぁ、その理由が問題なんだけどな。」
「頼むわよ!つよし!」
「そんなにプレッシャーかけちゃまずいって?」
「セツ菜ちゃん、ありがとう。まぁ、6年生ともなると、体育祭も並木祭もフレッシュさがなくなるのは分かるが、果たすべき使命を果たさないのは良くないな。」
こうして騎馬戦研修の大元締めである上山第2大隊長に山川は白羽の矢を立てた。




