4年次卒業式②
「あっ!ここにいたか。」
「ね?言ったでしょ。」
「つよしも一兵君も何呑気に昼御飯食べてんのよ?」
「んなこと言われてもよ、俺達もう挨拶済ませたし。やる事ねーから飯食ってたんだよ。なぁ、一兵?」
「うん。お世話になった人達にはちゃんと挨拶したし。って言うか良子さんもセツ菜も昼飯早く食わないと、午後からの講義に影響出るよ?」
「どーせ、写真ばっか撮ってたんだろ?」
「まぁ、それは否定しないけど。」
「ま、気持ちは分からなくもないけどな。」
「今年度の卒業生にはかなり世話になったし、事実各種行事や部活動で参考になった世代だしな?」
「でも、卒業式が終わったら俺達は新5年生になったも同然。」
「分かったわよ。」
「良子、急いでご飯食べよ。」
「午後は課業あんぞ?急げ。」
「山川君も一兵も案外ドライなのね?」
「まぁ、自分に関係ない事にはドライかもね。」
と、そんな感じで卒業式の日も課業があるのは驚いたが、防衛医科大学校らしいと言えばそうかもしれない。PM1715国旗が降下されると、扶桑寮(男女共用5、6年生専用)では、仮住まいだった部屋から卒業生が使用していたメインフロアへまた引っ越しが行われた。メインフロアはシャワー室や学習室が近く、また玄関も近く極めて便利である。
「こう言う事もあろうかと、荷物はコンパクトにまとめておいたから、作戦成功!」
「つーか、第2大隊付になった時に言われてたじゃん。」
「良子なんか大ばらくたにしてたじゃん?」
「馬鹿にしないでよ?もう引っ越し済ませたんだから。ね?セツ菜?」
「うん。これからシャワーに行くとこ。」
「まずいぞ一兵?先を越されている。」
「急ぐべし‼」
「へぇ。そんなに激動の1日だったんだ?」
「そうなんですよ、川下一曹。」
「さっき良子学生とセツ菜学生が同じ事言って飯食ってたぞ?」
「また先を‼」
「お前ら喧嘩でもしたのか?」
「いえ、全然そう言う事じゃないんですけど…。今日は色々ボタンの掛け違いと言う様な状況にありまして。」
「よく分かんねーけど、早く慣れると良いな。第2大隊付もよ?」
「まぁ、もう引っ越しは無いと思うんでこの様な事にはならないかと思われます。」
「何でも良いけど仲良くな。」
「はい!御馳走様でした。」
「なぁ、山川?何でこう言う日は良子さんやセツ菜の雰囲気変わるのかな?」
「おセンチなんじゃね?」
「何おセンチって?」
「センチメンタルの略しておセンチ。」
「なるほどね。卒業って女子にとっちゃおセンチな事なのかな?」
「よく分からないけど俺達はいつも通りに過ごすだけだ。お互いに良い大人だしな。」
「それはその通りだね。」
「シャワー行くか?」
「行っとく。」
「あ!良子!ここ男子スペースだぞ?」
「今日はごめんね。」
「何で謝る?おセンチなだけだろ?」
「うん。それだけ伝えたくて。」
「スマホ使用OKなんだからLINEでも何でも良いじゃん?男子スペースに来ちゃまずいって。いくら俺達が夫婦でもさ。」
「うん。お休み。また明日。」
男女共用とは言え男子スペースに女子がいたり、女子スペースに男子がいるのは風紀上まずい。卒業と言う大きな節目に浮き足立つのは仕方の無い事なのかもしれないが、駄目なモノは駄目である。




