4年次冬期休暇
「このところ慌ただしかったせいか、この冬休みは非常にありがたい。」
「確かにな。」
「でも、どこに行くのもおっくうと言うか、動きたくない。」
「一兵忘れたの?年末はお義父さんが久しぶりに家にいるから、帰省するって約束したじゃない?」
「そんな約束もあったな…。」
「明日には所沢を出ないと間に合わないよ?」
「え?あ、そっかお義父さん5個以上家あるもんな?今年はどこ?」
「福岡だよ。これ航空券。」
「おう。ありがとう…って1030発福岡行きってマジか?明日寝坊絶対駄目じゃん。」
「山川君、一兵が寝てたら叩き起こしてね!」
「分かった。」
翌朝…。AM0530起床。顔を洗い、髭を剃り、山川が起床。
「寝坊助どころか、整っているじゃねーか?」
「ああ。じゃあ行ってくるね。良いお年を。」
「珍しい。休みの日に一兵が寝坊しないなんて。ちょっと待ってて。私まだだから。」
AM0700防衛医科大学校を出発。AM0900羽田空港着。
「あらかじめルート調べといて良かった。」
「こんなに早く着いてお土産でも買うつもりだったの?」
「え?うん。まぁ。ちょっとタバコ吸ってくるね。セツ菜お土産でも見てて。」
「うん。」
とまぁ、慣れないフライトにドギマギしていた一兵とセツ菜であったが、どうにかAM1030羽田空港発福岡行きの便で福岡へ渡った。
「ただいま!」
「あら?セツ菜、一兵君。こんな早く着くならLINEの一つもいれなさいよ?ゴメンね一兵君。こんな遠い所まで来てもらって。」
「いえ。気分転換になって自分は楽しいです。」
「セツ菜、一兵君。」
「パパ?」
「お義父さん、ご無沙汰しております。」
「医師国家試験まであと2年か…。セツ菜も一兵君も医官に成れなかったら、金海グループの社員のポストは用意してあるからな。」
「ありがたいお話ですが自分もセツ菜も絶対に現役合格して見せます。」
「うむ。その気合いが大事だ。だが自衛隊だけが人生の選択肢ではないぞ。」
「パパ?一兵が帰省するといつもその話ばっかり。」
「一兵君だって分かっているわよね?」
「はい。お義父様が御健在のうちは、自衛隊で医官として頑張って行きたいと思っています。」
「ほう?つまり私無き後の金海グループは一兵君が引き継いでくれるのかね?」
「はい。ただお義父様の様にちゃんとやっていける自信はありませんが…。」
「母さん?酒はまだか?一兵君がこんなにも嬉しい事を明言しているのに飲まずに居られるか?」
「珍しいね?パパお酒強くないのに。」
「セツ菜、ちょっと手伝って‼今日はすき焼きよ?」
「やったー‼」
「で、最近の授業では国際感染症学を熱心にやっているのか?」
「はい。ただ他にも訓練や何やらで毎日忙しいです。」
「経営の鬼と呼ばれているお父さんが、一兵君を本当の息子の様に可愛がるなんて、セツ菜と結婚するまでは全く考えられない事だわ。」
「ママ?これお土産。」
「そんな気を使わなくても。折角なのでお父さんに食べて貰いましょう!」
「お義父さんの口に合うかは分かりませんが、セツ菜と自分が選んだんです。是非食べて下さい。」
「そんな気を使わなくても良かったのに。一兵君、まぁ飲もう。」
とまぁ、そんな調子で年明けまでを福岡で過ごし、翌2026年1月5日防衛医科大学校に戻った。
「財閥の御曹司も楽じゃねぇな?」
「まぁ、それはそれで楽しいよ?」
「ふーん。」




