4年次体力検定
防衛医科大学校では、年に1回以上の体力検定が各学生に義務付けられている。検定種目は、3000メートル走、懸垂、ボール投げ、走り幅跳びの4種目である。
「学業だけじゃあかんのが医官の泣き所だな?」
「あー。もう走りたくない。12分35秒だって。」
「私より1分は遅いわよ?セツ菜?」
「私の課題はスタミナ。」
「山川は?体力検定どうだった?」
「全種目1位で、4年連続首席確定。」
「凄いな。タバコ吸ってるのに。」
「一兵はその顔を見ると、あまり記録が芳しくなかったみたいだな?」
「タバコ吸ってるしな。」
「それを言い訳にするな。」
「はぁーい。」
「部活も引退して運動する機会減ったからな。仕方無いな。」
「俺は部屋で軽い筋トレしてたぜ?」
「いつ?」
「一兵が寝た後に。サイレント山川と御呼び。」
「何ふざけているの?」
「全く真面目だ。」
「女子の首席はやっぱ良子さんか…。山川に子供ができたらとんだ化け物が生まれるかもな。」
「それはお前もな一兵。」
「防衛医科大学校のミスコンで4年連続グランプリのセツ菜ちゃんとアメフト馬鹿の一兵の子供なんて想像するだけでカオスだわ。」
「二人とも?その話はタブーでしょ?」
「そうよ。目一杯我慢しているんだから。」
「まずは子供の前に医師国家資格取得が最優先。」
「やっぱ今は自己処理か。」
「この話題はこれでおしまい。」
「オブラートに包まれているあたりが良いね。自己処理か。」
「二人とも理解した?」
「分かってるって。なぁ、一兵?」
「う、うん。」
「飯行くぞ、一兵!」
「こう言う時は飯だ。」
「え?川下一曹4人もお子さんいらっしゃるんですか?」
「自慢するつもりはないが妻が頑張ってくれてな。男の子が3人、女の子が1人だ。目に入っても痒くないって言うが、ありゃあ嘘だ。」
「どういう事ですか?」
「何をするにも銭がいる。自衛官だから幸いにも何とかやっていけてるがな。」
「やっぱ子育ては楽じゃないんですね?」
「俺と一兵もその話題で盛り上がってたら良子にコテンパンに言いくるめられました。」
「そりゃあそうだろ?折角ここまで来て妊娠しちまったら、休学か中退の恐れが濃厚だ。だからそれは絶対NGなんだよ。」
「とは言え男の辛さも分かってやれよ?」
「いえ。それは階級を得てからにしてください。」
「だそうだ。」
「ウィース。」
「何、一兵君酔っぱらってるの?」
「いや、シラフだよ?」
「真面目な話なんだからふざけないでよ。」
「そうだよ、一兵?」
「まぁ、泣いても笑ってもあと2年ちょい。互いの幸せの為にはちゃんと相手の事を理解してやれよ。それにもう22歳だろ?立派な大人じゃないか?」
「そうっすね。」
「他人事じゃないのよ?一兵君も。」
「はい!」
「本当に大丈夫?」
「セツ菜まで言うか?」
「言うわよ。」




